日本音楽著作権協会(JASRAC)は2009年4月28日、公正取引委員会から2月27日に受けていた排除措置命令を拒否し、公取委に対し排除命令の取り消しを求める審判請求を申し立てたと発表した。

 公取委は、JASRACが国内のテレビ局やラジオ局と締結している、音楽著作権の二次利用に関する包括許諾契約の使用料の算定方式を問題視。音楽著作権管理事業の市場全体におけるJASRACのシェア変動にかかわらず、各放送局からJASRACへの支払料率が一定であることに着目した。放送局が他の音楽著作権管理事業者の管理楽曲を番組などで使おうとすると、音楽著作権使用料の総額が増加するため、他の音楽事業者の管理楽曲を使わなくなり、結果として他事業者の放送分野における音楽著作権管理事業を制限していると判断。包括許諾契約の使用料の算定方式を変更するよう命じていた。これに対しJASRACは、2月27日に開催した報道関係者向けの説明会で、排除命令を不服として審判を請求する方針を示していた。

 今回の発表でJASRACは、排除命令について「著作権及び著作権管理事業の本質ならびに我が国の著作権管理事業者が置かれている現状を理解しないまま、私人間の交渉事項に介入するものであり、大局的な目で見れば、権利者のみならず利用者の利益をも害するものと考えられる」と批判。「審判において当協会の考え方を説明し、公正な判断を求めていく」とした。

 JASRACは今後の審判で、複数の主張により排除命令の取り消しを求めていく方針。具体的には、(1)音楽の著作物は代替性がない、(2)放送局が著作権使用料の追加負担を防ぐために他事業者の管理楽曲を使わないということはない、(3)多くの諸外国でも包括許諾契約を採用している、(4)包括許諾契約の対象となるJASRAC管理楽曲の総数は年々増えている、(5)日本の放送分野における著作権使用料は国際的にみて低い水準にある、などの点を論拠としていくとする。

 ただしJASRACは、「当協会は本件について、排除措置命令という方法ではなく、公正取引委員会との協議を通じて実行可能で効果のある徴収方法を検討するのが適当だと考えている」とも表明しており、必ずしも現行制度に固執するわけではなく、修正の可能性に含みを残している。