音楽や芸能、映画など各分野の著作権団体で組織する「デジタル私的録画問題に関する権利者会議」は2009年2月24日、Blu-ray Disc(BD)に対する私的録画補償金の賦課を4月1日に実施するよう求める声明を発表した。BDへの補償金賦課をめぐっては、電機・電子メーカーの業界団体である電子情報技術産業協会(JEITA)が2月13日、反対意見を表明しており、今回の権利者側の声明はJEITAの意見に再度反論するもの。

 BDへの補償金賦課は、2008年6月に行われた経済産業大臣と文部科学大臣の合意により導入の方針が決められた。その後、2009年2月3日に文化庁が、著作権法施行令の改正案を発表。この中でBDを補償金の対象機器・媒体として追加することを盛り込んだ。この著作権法施行令の改正案は3月4日までの予定で意見募集(パブリックコメント)を実施中で、文化庁は4月1日の改正施行を目指している。

 JEITAは2月13日、文化庁へのパブリックコメント提出という形で意見を表明。その中でBDへの補償金賦課について、(1)BDおよびDVDについて、デジタル放送を録画した場合は補償金の対象外とすべき、(2)2011年のアナログ停波までをめどにした暫定措置であると明記すべき、(3)BD以外の機器や媒体への賦課を避けるためレーザー波長とレンズ開口数を記載すべき――という3項目の是正を要求。BDへの補償金賦課に事実上反対していた。

 今回の権利者側の声明では、(1)について「BDが補償金の対象となることは明らか。それはデジタル方式で録画できるからであって、録画の元になる放送がアナログ放送かデジタル放送かは制度上関係がない」として、JEITAの主張は誤りであるとする。また、BDへの補償金賦課の根拠となっている経産相・文科相の合意について、「BDを補償金の対象にすることで補償金制度を補完し、地上デジタル放送のコピー方式であるダビング10の早期実施に向け締結されたもの。この点から、両大臣の合意は地上デジタル放送を念頭に行われたものであり、JEITAの意見は読む人に誤った認識を与える」と批判した。

 (2)については、「権利者はBDが補償金の対象機器・媒体として政令指定されるだけで満足するものではなく、現行の補償金制度の抜本的な見直しが必要と考えている。本政令案(著作権法施行令の改正案)はその契機となるものと位置付け、BDが改正案通り、4月1日から対象機器・媒体として政令指定されることを強く望んでいる」とした。なお、(3)について権利者側は特に言及していない。

 権利者側はかねて、JEITAがBDへの補償金賦課に事実上反対していることを察知していた。JEITAの意見表明に先立つ2月5日に権利者側が開催した記者会見でも、「一部メーカーが、アナログチューナー非搭載のDVDレコーダーについて、補償金の対象にならないという考えを持っているとの話を聞く。万一それが事実ならば、明確な法令違反として法的措置も辞さない」(実演家著作隣接権センターの椎名和夫運営委員)と表明していた。今回は声明文をWebサイトに掲載したのみだが、今後はさらに踏み込んだ行動を取る可能性もある。

 また、2月27日に予定されている情報通信審議会の会合では、権利者側の委員とメーカー側の委員が同席する。この場で権利者側委員がメーカー側委員に直接質問を投げかけ、討論が行われる可能性もある。