音楽や芸能、映画など各分野の著作権団体で組織する「デジタル私的録画問題に関する権利者会議」は2009年2月5日、私的録音録画補償金についての会見を開き、パソコンや携帯音楽プレーヤーなどへの賦課を含めた全面的な見直しが必要との見解を表明した。

 私的録音録画補償金を巡っては、文化審議会の著作権分科会、法制問題小委員会において、「iPod」を始めとする携帯音楽プレーヤーを対象機器に追加するか否かについて2005年に議論されたが、見送りとなっていた。翌2006年から2008年にかけては、補償金問題を専門に扱う私的録音録画小委員会が設けられ、制度そのものの抜本的な見直しに向けて議論された。文化庁は2007年12月の同小委員会において、中長期的に補償金制度を縮小・廃止し、録音・録画に関する私的複製について契約ベースでの対価支払いに順次移行するという、いわゆる「20XX年モデル」を提案していた。これを軸として2008年の同小委員会で合意が模索されたが、当面の補償金制度の扱いについて権利者側とメーカー側の意見が激しく対立し、結局合意できないまま2008年末に同小委員会が解散し、現在に至っている。

「239億曲がPCの中にコピー」

 権利者側は2008年12月に、ニワンゴの動画投稿サイト「ニコニコ動画」にあるアンケート機能「ニコ割アンケート」を用い、補償金制度に関する調査を実施。これによると、私的録音に用いる機器はパソコンが72.4%と多く、これを基に試算すると「11~39歳の個人がパソコンに保有している楽曲は239億曲を超える」(日本音楽著作権協会の菅原瑞夫常務理事)など、パソコンによる私的録音録画の実態が広がっているとする。また、パソコンに収録した楽曲を携帯音楽プレーヤーにコピーする人の比率も47.1%に達したとする。これらを踏まえ、権利者側ではパソコンや携帯音楽プレーヤーへの補償金賦課が必要としている。

 実演家著作隣接権センター(CPRA)の椎名和夫運営委員は、「私的録音録画に使われる機器は、基本的にはパソコンであるし、パソコンを使うことで新しいビジネスモデルが出ているのだと思う。これまで文化庁は、議論の混乱を恐れパソコンへの補償金賦課に関する議論を避けていたが、アンケートによりこれだけパソコンで私的録音録画の実態があることが分かった以上、やはりパソコンの話をしないといけない」と表明。「現行の補償金対象機器のように、機器全体の価格を基準として補償金の額を設定するわけにはいかないだろうが、パソコン向けの新しい料率算定のルールとシステムを作り、賦課していく必要があると思う」とした。

 菅原氏は、「2008年の私的録音録画小委員会が結論を見ないまま終結したということは、(20XX年モデルという)文化庁の折衷案が飛んでいるということ。パソコンで私的録音録画ができることについてどう考えるのか、もう一回、補償金についてもっと突っ込んだ議論をすべき」と語り、20XX年モデルは既に破棄されているとの見解を示した。