東芝は2008年12月6日、東京・秋葉原で同社の映像処理用プロセッサー「SpursEngine(スパーズエンジン)」に関するイベントを開催した。搭載ボードを販売するトムソン・カノープスやリードテックジャパン、ソフトウエアを提供しているCRI・ミドルウェアやサイバーリンクなど、関連メーカー8社もプレゼンテーションや展示を実施。会場前にはイベント開始前から長い行列ができ、開始後も入場制限が実施されるなど、SpursEngineへの関心の高さが伺われた。

 東芝のプレゼンテーションではIBM、ソニーグループ、東芝が共同で開発した「Cell Broadband Engine」をベースにしたSpursEngineについて、その性能の高さや消費電力の低さがアピールされた。一例として、すでにSpursEngineを搭載している自社のハイエンドノートPC「Qosmio」でのテスト結果を紹介。ハイビジョンのMPEG-2形式とH.264形式の相互変換で、CPU(Core 2 Duo 2.26GHz)を使った変換に比べて処理時間が10倍以上高速になるという。

 消費電力に関しては、ハイビジョンのMPEG-2形式からH.264形式へ変換するためにかかった電力の値を公開。CPU使用時はアイドル状態からの増加分が29Wだったのに対し、SpursEngineを使用した際は、CPUの増加分が3WとSpursEngineの消費電力が13.3Wで、合計約16Wの増加に抑えられたという。処理時間も10分の1に短縮されるため、トータルの消費電力はさらに減ることになる。

 また、SpursEngine搭載ボードが複数枚同時に使用可能な点もアピール。1つのソフトウエアが複数のボードを使用して性能を高めたり、複数のソフトウエアが別々のボードを使用して負荷を分散させるといった使い方もできるという。なお複数のボードを同時利用するにはソフトウエアが対応する必要がある。

 トムソン・カノープスのプレゼンテーションでは、同社のビデオ編集ソフト「EDIUS Pro 5」が“来年暖かくなったころ”にSpursEngineに対応することを表明した。編集後の出力でそのパワーを利用できるようになる。また、AVCHD形式の映像をCanopus HQ CodecのAVI形式に変換するフリーソフト「Canopus AVCHD converter」についても、SpursEngineへ対応することが明らかになった。搭載ボードの「FIRECODER Blu」は最大4枚まで同時使用可能で、枚数を増やすほど高速に変換できるという。なお、Canopus AVCHD converterは次のバージョンでHDV形式への変換も可能になる見込みだ。

 このほか、SpursEngine搭載ボード「WinFast PxVC1100」を投入しているリードテックジャパンが、超解像とハンドジェスチャーのミドルウエアを除くSDKの無償配布を告知した。