「ウイルス(マルウエア)にまつわるビジネスは、組織化されるとともに分業化が進み、今や一つの産業になっている」。ロシアのセキュリティ企業カスペルスキー研究所の最高経営責任者(CEO)兼アンチウイルス研究所所長を務めるユージン・カスペルスキー氏は2008年10月21日、国内向けサービスの記者発表会の席上、ウイルスの現状などについて語った。

 カスペルスキー氏によれば、現在のウイルス開発の目的は金もうけ。そして、効率よくお金をもうけるために組織化されていることが特徴だという。

 「従来の犯罪組織の多くは、トップがいて、その下に幹部、またその下に実行部隊がいるといったピラミッド構造になっている。ところが、ウイルスにかかわる犯罪組織では、個々のメンバーが独立して活動しお金をもうけ、必要に応じて連携するといった構造になっている」(カスペルスキー氏)。分業化が進んでいて、「ウイルス作成、ウイルス売買の仲介、ウイルスで入手した個人情報の売買などを、異なる人間が行っている」(同氏)。

 そのほかの特徴としては、「個人ユーザーだけではなく、企業や組織、政府など、さまざまな対象を狙うようになっている」(カスペルスキー氏)ことを挙げる。企業を狙ったほうが、お金になるためだと考えられる。「例えば、ある銀行の情報を狙ってウイルスが送り込まれたことがある。銀行内のネットワークに接続したコンピューターに感染し、やり取りされる取引情報を盗むことが目的だった」(同氏)。

 同日、同社日本法人は、国内ユーザー向けのSaaS型サービスを2009年に開始することを明らかにした。サービスは2種類。同社の対策ソフトを月額課金モデルで提供する「Kaspersky Non Stop Security」と、Webやメールなどのトラフィックに潜む脅威(ウイルスなど)をゲートウエイで検出・駆除する「Kaspersky Hosted Security」。いずれも、ISPやASP事業者を通じて提供する。

 「現在、複数のISPやASPと話を進めている最中。Kaspersky Hosted Securityについては、2009年の第1四半期あるいは第2四半期にサービスを開始する予定だ」(日本法人社長の川合林太郎氏)。サービスの詳細や料金については未定。Kaspersky Non Stop Securityについては、開始時期についても、現時点では未定としている。