文化庁長官の諮問機関で私的録音録画補償制度について話し合う、文化審議会 著作権分科会 私的録音録画小委員会の2008年度第4回会合が、10月20日に開催された。この中で、焦点となっていた私的録音録画補償金の見直しについて、年度内に結論を出すのを見送ることが確認された。2005年春から3年半にわたり続いている補償金の見直しをめぐる議論は、解決の糸口が見つからないまま再び先送りとなる。

 私的録音録画補償金の見直しをめぐっては、権利者側とメーカー側・ユーザー側との対立が解けず、7月10日を最後に同小委員会の会合が3カ月以上開かれないままとなっていた。この日の会合で文化庁 長官官房 著作権課 著作物流通室長の川瀬真氏は「7月10日以来、妥協点があれば新たな提案をすることを視野に、事務局で非公式に関係者の意見を聞いてきたが、残念ながら現状では新たな提案を出せない状況にある。今期の委員の任期も迫っており、2年という本小委員会の期限も過ぎている」として、結論が出ないまま、年度末の報告書を作成する意向を表明した。今後、11月下旬~12月上旬をメドに両論表記ベースの報告書案を文化庁が作成。同小委員会での承認を得て、上部組織である著作権分科会へ報告する。

 2009年度以降の議論のスキームについては、「補償金の議論は今後も続ける必要があるが、本小委員会と同じ枠組みで議論を続けても進展があるかどうか疑問がある。理論をベースにした議論は既に十分に行われており、論点もはっきりしている。現時点で具体的なアイデアがあるわけではないが、今後は新たな枠組みで話し合った方が有意義だと考えている」(川瀬氏)と語った。

 同小委員会のもう一つの焦点は、インターネット上にある違法コンテンツをユーザーがダウンロードすることを違法化するという、いわゆるダウンロード違法化問題である。この日の会合では、権利者側とユーザー側がそれぞれの立場から改めて意見を表明。今後については、「補償金問題と切り離してダウンロード違法化問題を進めて良しと本小委員会で判断されれば、2009年の通常国会への提出も考えたい」(川瀬氏)との意向を示している。

BDへの補償金課金、「見直し条項」めぐり経産省と文化庁の溝

 この日の会合では、Blu-ray Disc(BD)への補償金課金について「ダビング10を7月4日に実施する条件として、経済産業大臣と文部科学大臣がBDへの補償金課金で合意したと発表されていたが、いまだに政令指定されていない。これから政令指定され、ダビング10が続く限りBDへの補償金課金も続くという理解で良いのか」(華頂尚隆委員)との質問が出た。これについて川瀬氏は、「作業が少し遅れているが、経産省と文化庁で準備を進めている。JEITAにも協力いただいている」と回答した。

 ただし、実際に補償金の対象機器・媒体としてBDが追加されるメドは、現時点では立っていない。「経産省は、テレビ録画をめぐる環境が変わった場合にBDの政令指定を再検討するという、いわゆる見直し条項の追加を要求している。文化庁としては、現行の補償金制度ではDRMと補償とは関連付けられていないという考えで、考えに溝がある」(川瀬氏)という。今後については「決定的に議論が紛糾しているわけではない。年末商戦には間に合うよう、経産省との合意を目指していく」(川瀬氏)とした。

 BDの機器・媒体にかかる料率は、DVDと同程度になる見込み。現在市場で売られているBDレコーダーは、DVDレコーダーとしての機能も備えているため、既に補償金が賦課されている。「既にDVD機器として課金済みのものは、BDの補償金が政令指定されても二重に賦課されることはない。BDの追加指定で新たに対象となるのは、主にBD-REなどの記録媒体だろう」(川瀬氏)という。