文化庁は2008年10月9日、文化審議会 著作権分科会の2つの小委員会における議論をまとめた「中間整理」を公表、11月10日までの予定でパブリックコメントの募集を始めた。今回中間整理を公表したのは、「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」(保護利用小委)と「法制問題小委員会」(法制小委)で、2008年に審議された内容についてである。

 保護利用小委では、著作権の保護期間の延長問題について言及。現在の日本の著作権法では、著作物の保護期間を「死後50年まで」としている。権利者側などはこれを「死後70年まで」に延長すべきと主張。ユーザー側などは死後50年のまま維持すべきと主張し、対立していた。中間整理では、保護期間延長の意見と、現行の保護期間を維持する意見を両論併記するにとどめ、意見の一本化は見送った。その上で「著作物の利用を円滑化するための方策を含め、著作権法制全体として、保護と利用のバランスが取れた結論が得られるよう、検討を続ける」とし、継続審議していく意向を示した。

 著作物の権利者が不明で二次利用の許諾申請ができない場合の扱いについては、現行の裁定制度の運用改善や著作隣接権の裁定制度の創設など、「制度的措置を行うことが必要」として、著作権法の改正を進める意向を表明。今後の会合で、(1)権利者を探す際のガイドラインが必要かどうか(2)裁定制度の利用記録をどう公示するか(3)裁定制度を用いて二次利用した後に権利者が現れた場合にどうするか――などを詰めていく。

 国立国会図書館やそれ以外の一般の図書館において、書籍をスキャンするなどしてデジタルアーカイブに収録することについては、(1)国立国会図書館に納本された書籍を直ちにデジタルデータとして複製できるようにする(2)マイクロフィルムを電子データに変換するなど、長期保存のために媒体形式を変換する必要がある場合は複製が認められるという法解釈を明確化する――などを盛り込んでいる。一方、デジタルアーカイブに収録された資料の利用方法については「引き続き検討が必要」とした。館内での閲覧、館内でのコピー、他の図書館に対するインターネット経由での提供、一般の利用者に対するインターネット経由での閲覧などについて、可否やその方法を今後詰めていく。

 法制問題小委員会では、ソフトウエアのリバースエンジニアリングについて、相互運用性の確保とバグの発見という2つの目的で認める方針を示した。また、インターネット利用時にパソコンやサーバーに作られるキャッシュについて、(1)著作物の視聴等にかかる技術的過程において生じる(2)キャッシュの生成が付随的または不可避的である(3)一般的な機器利用として合理的とみられる範囲内の視聴などに用いられる――という要件を満たせば認めるとの方針を示している。また、インターネット上のサーバーで行われるキャッシング、ミラーリング、バックアップ、フィルタリングなどを認めることも盛り込んでいる。

 それぞれの中間整理の概要と全文は、電子政府のWebサイトに掲載されている。また、パブリックコメントは文化庁あての電子メールや郵送、FAXなどで受け付けている。