著作権に関する法体系の抜本的な見直しを目指す「デジタル・コンテンツ利用促進協議会」が2008年9月9日に設立された。映像や音楽などのデジタルコンテンツを、円滑に二次利用できる環境を整えることを目指し、著作権法などの法体系を抜本的に見直すよう、民間ベースで検討し提言していく。

 会長には、東京大学名誉教授で西村あさひ法律事務所 顧問の中山信弘氏が就任。副会長は、角川グループホールディングス 代表取締役会長兼CEOの角川歴彦氏、自民党参議院議員の世耕弘成氏、スクウェア・エニックス 代表取締役社長の和田洋一氏の3人が務める。

 著作権の法体系にまつわる議論は、これまで文化審議会や知的財産戦略本部、放送関連では情報通信審議会と、政府の審議会や懇談会が中心だった。これらの会合では、メーカー、放送局や映画会社などのコンテンツホルダー、著作権団体、消費者といった利害関係者が出席して議論している。

 しかし、ここ数年は私的録音録画補償金、著作権の保護期間、地上デジタル放送のコピー制御方式など、重要な課題をめぐる関係者の対立が相次ぎ、そうした課題を政策として決定・実行できない状況が続いている。民間ベースでは、著作権団体らで構成する「Culture First!連合」や日本経団連、ネットユーザーによる「インターネット先進ユーザーの会」などがあるものの、立場の異なる利害関係者が集まって議論する場はなかった。デジタル・コンテンツ利用促進協議会では、「純民間ベースで著作権問題を広く議論する場を作る」(中山会長)ことを目指している。

 この日開かれた設立総会で中山会長は、「一つの著作物に大勢が関与し、複雑な権利関係となっているのを修正しないと、コンテンツの流通は進まない。米国では市場に任せて、契約によって権利処理しているが、日本の現状では契約に任せて本当にうまく進むだろうか。激しいスピードでグローバルな競争をしている中、『百年河清を待つ』ことはできない。このままでは、日本のネットビジネスやコンテンツビジネスは外資の餌食になってしまう」と指摘した。

 その上で、「コンテンツがうまく流通しない原因は事業モデルや資金調達、言語の問題などもあるだろう。とはいえ、著作権がビジネスの障害になる事態は避けなければいけない。現行の著作権法は、現実問題として規制法的に機能していることは否定できない。現在第一次的に利用されているコンテンツを二次、三次利用したり、埋もれているコンテンツを多くの人に触れてもらったりすることが重要」とした。

 権利者との意見の衝突については、「文化の担い手はあくまで個々の創作者であり、いかなる制度を作るにせよ、彼らへの利益還元を厚くすることも重要。単に流通だけを強調すると、反対する人も多く現れる。しかし、コンテンツが多くの人に利用されなければ、利益を権利者に還元することもできない」と語り、一定の配慮を示しつつ、バランスを取りながら流通促進を図る考えを示した。

 中山会長は文化審議会や知財本部の委員を数多く務め、知的財産権法に関する研究の第一人者として知られている。また、コンテンツホルダーの有力企業である角川やスクウェア・エニックスが協議会に積極的に参加することで、停滞している著作権法体系の議論を、業界全体を巻き込みながら進めていく意向だ。

 9月8日時点で協議会に参加を表明している企業・団体は47法人。コンテンツホルダーでは角川グループホールディングスや小学館集英社プロダクション、タカラトミー、日活、バンダイナムコホールディングスなどが参加。流通関連ではNTT、NTTドコモ、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、スカイパーフェクト・コミュニケーションズ、ドワンゴ、BitTorrent、楽天などが参加している。著作権団体で法人会員となるのは同日時点で日本文藝家協会のみだが、「法人として登録はしていないが、個人会員として参加し意見を述べていく。平場で議論できると聞いており、期待している」(日本音楽著作権協会 常務理事の菅原瑞夫氏)という声も聞かれた。