「コンピューターはまだ始まったばかり。今後10年もソフトウエアの“マジック”に投資していきたい」――。2008年5月7日、米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長が東京都内のホテルで講演を行った。既に同社が発表している通り、7月に経営の第一線から退くゲイツ会長。「7月1日からキャリアが変化する」(同氏)前の最後の来日講演となった。

 ゲイツ会長は今後10年も「ソフトウエアは重要で、やる価値があるもの」と言及。SaaSなど新しいソフトウエアの提供方式も含めて、今後もソフトウエアに投資していくと語った。今後10年で変化を遂げるものとして、ゲイツ会長はインタフェースを一つの例に挙げた。「キーボードは残るが、机の表面を触ったり、ペンで入力したり、音声で操作したりと、インタフェースは変化していく。これらのナチュラルインタフェースはソフトウエアの“マジック”で実現が可能だ」と説明し、今後も「ソフトウエアでトレンドを作り、SaaSをはじめとするソフトウエアの力に賭けていきたい」とした。

 日本のIT市場については「米国に次ぐ2番目の市場」である一方で、「学生などの若年層の利用率は他の先進国に比べて低い」と指摘。カリキュラムなどをインターネットで公開するなど国によっては既に100%に達している学校におけるネット利用が、日本においては遅々として進んでいないと語った。

 マイクロソフトは2008年2月に、学生にソフトや開発ツールを無償で提供する「DreamSpark(ドリームスパーク)」というプログラムを発表している。学生が「Visual Studio」や「Expression Studio」などを、無料で利用できるプログラムだ。DreamSparkを通して今後も若い人材への投資もしていきたいという。

Media Centerの地デジ対応と新検索サービスを近々発表

 ゲイツ会長は新しいサービスにも言及した。まず、Windows VistaのWindows Media Centerにおいて、2008年6月にもISDB-T(integrated services digital broadcasting-terrestrial)に対応し、地上デジタル放送の視聴が可能になることを表明。「(Windows Media Centerの地デジ対応によって)Windowsの新たな特徴を提供できる」とした。

 Windows Vistaの次期OS「Windows 7」(開発コード名)に関しては「今までのOSは2~3年に1度のペースで投入してきたが、今回もその通りとはいえない。ただ、現在も微調整をしながら一生懸命開発に取り組んでおり、楽しみにしている」と言及するにとどまった。

 マイクロソフトは、2008年5月3日(米国時間)に米ヤフーの買収を断念した。これについてゲイツ会長は、「ヤフーとは根気強く対話したが、結果としてそれぞれが独立した戦略で展開していくということになった」とし、新しい検索サービスを2008年6月に米国で発表することを明らかにした。

 今後は「会長兼相談役」としてマイクロソフトに所属し続けるゲイツ会長。「17歳からフルタイムで働き続けたが、今後はパートタイムで働くことになる」と語った。これからはビル アンド メリンダ ゲイツ財団での活動に力を入れ、マイクロソフトのイベントや財団の発表等で再び来日する可能性もあるという。