Futuremarkは2008年4月28日、ベンチマークソフト「3DMark Vantage」を発表した。3DMarkはPCパーツ業界では定番のベンチマークソフトで、主にゲーム用のグラフィックス処理の性能を測定できる。新バージョンの最大の特徴は、Windows Vistaで導入されたDirectX 10のシェーダーモデル4.0に対応した点。これまでの「3DMark06」はDirectX 9までの対応で、DirectX 10のAPIを使ったときの処理性能は測れなかった。日経WinPC編集部では、最新のPCを使って各種のグラフィックスボードのスコアを調べた。

 3DMark Vantageには、「Basic Trial Edition」「Basic」「Advanced」「Professional」の4種類がある。Basic Trial Editionは1つのシステムで1回のみ実行可能なお試し版。Basicは6.95ドル。1種類の設定のテストだけ実行できる。Advancedは設定をすべて変更可能で、テストもすべて実行できる。19.95ドルのダウンロード版と、29.95ドルのCD-ROM版がある。最上位のProfessionalは、Advancedの機能に加え、コマンドラインからベンチマークを自動実行できるようになる。価格は495ドル。BasicとAdvancedは個人利用のみ。Professionalは商用利用も可能だ。

 3DMark Vantageは、解像度や描画品質が異なる設定を「Preset(プリセット)」としてあらかじめ組み込んである。これは3DMark06にはなかった新機能だ。1024×768ドットの「Entry」、1280×1024ドットの「Performance」、1680×1050ドットの「High」、1920×1200ドットの「Extreme」があり、選択してテストを実行すると、スコアの頭にそれぞれ「E」「P」「H」「X」の文字が付く。ディスプレイの異なる環境での計測や性能比較が3DMark06より格段に楽になった。

 今回試したパーツ構成は以下の通りだ。

【CPU】Core 2 Extreme QX9650(3GHz)
【マザーボード】P5Q Deluxe(ASUSTeK Computer、Intel P45搭載)
【メモリー】DDR2-800 1GB×2(JEDEC準拠)
【HDD】WD Caviar SE 16 750GB(Western Digital、WD7500AAKS)
【OS】Windows Vista Ultimate Service Pack 1 32ビット日本語版

 グラフィックスボードは12種類を用意した。

  • Radeon HD 3870 X2/3870/3850/3650/3450(以上レファレンス)
  • GeForce 9800 GX2(PV-T98U-ZHF9、Pine Technology)
  • GeForce 9800 GTX(9800GTX-512N OC780-2360、FOXCONN)
  • GeForce 8800 GTX(レファレンス)
  • GeForce 8800 GTS(GF8800 GTS 512MB DDR3、ZOTAC International)
  • GeForce 8800 GT(GLADIAC 988 GT 512MB、エルザ ジャパン)
  • GeForce 9600 GT(PV-T94P-YDD4、Pine Technology)
  • GeForce 8600 GT(GeForce 8600GT Zone Edition 256MB GDDR3、ZOTAC International)

 今回のテストは、各グラフィックスチップのDirectX 10性能の分析ではなく、出たばかりの新しいベンチマークソフトでどの程度のスコアが出るかを取りあえず一覧するのが目的だ。一部、グラフィックスチップメーカーの標準状態よりも動作周波数の高い、いわゆるオーバークロック版のボードが含まれている。

 グラフィックスドライバーはRadeonもGeForceも最新のバージョンを使用した。AMDは3DMark Vantage用としてサポートページで「737-33840: 3DMark Vantage Hotfix」という文書を公開している。Radeonには、ここから入手できるドライバーを適用した。GeForceには、NVIDIAが4月28日に公開した175.12というβ版を使った。

 テストは、3DMark Vantage ProfessionalのPerformanceの標準設定で実行した。アンチアイリアスや異方性フィルタリングなどの画質改善機能は有効にしていない。グラフ1がテスト結果だ。当初は、途中でエラーメッセージが出てテストが止まってしまったのだが、Windows Updateで最新の修正プログラムを適用することでエラーが解消した。ところが、その状態でもRadeon HD 3650/3450だけはエラーが出てしまい、テストが終了しなかった。

 CPUに大きく依存する「CPU Score」は、12200前後だった。各ボードの性能差は、おおむね3DMark06と同じ傾向になった。これまで3DMarkの新バージョンといえば、現行グラフィックスチップでは歯が立たないほどの描画処理で登場することが多かった。Vantageでは、どのチップもそこそこのスコアで、描画もぎこちなさはあるものの、見られるレベルになっている。これは、1280×1024ドット(Performaceの解像度)でテストを実施しているためだろう。現在は1680×1050ドットの22型や1920×1200ドットの24型の製品が買いごろの価格になっており、人気が高い。解像度が上がれば描画負荷が高まりスコアは当然下がる。

 3DMark Vantageの動作にはWindows VistaとDirectX 10対応のグラフィックスボードが不可欠だし、Futuremarkは、快適に動かすためにはCore 2 Duo E6600かAthlon 64 X2 6000+以上のCPUが必要だとしている。グラフィックスはなかなかきれいなので、条件が合う人は試してみるとよいだろう。