無線LANの普及に伴い、家庭内LAN(ホームネットワーク)を簡単に構築できるようになってきた。今では、パソコンやスマートフォン/タブレットだけでなく、テレビ、HDD/DVD/ブルーレイディスクレコーダー(以下レコーダー)、プリンター、デジタルカメラ、ゲーム機、オーディオ機器など、さまざまな製品が“ネットワーク対応”をうたっている。無線LANルーターがあれば、これらでLANを作り、簡単にインターネットへ接続できる。
しかし、個々の機器をインターネットにつなぐことにしかLANを活用しないのはもったいない。LANの醍醐味は、機器同士でデータを自由にやり取りできることにある(図1)。もちろん、パソコンやスマートフォンだったらWordやExcelなどの文書ファイルも共有できるが、家電を含めた連携で一番メリットが大きいのは、写真、音楽、ビデオなど「コンテンツ」のやり取りだ。
例えば、1階のデスクトップパソコンに音楽データを大量に保存しているとする。この音楽を2階で聴きたいときにどうするか。LANがないなら、デスクトップパソコンのデータをノートパソコンや携帯音楽プレーヤーなどにコピーして、持ち運ばなくてはならない。しかし、1階と2階のパソコンがLANでつながっていれば、2階のパソコンから1階のパソコンの音楽データを直接再生できる。これならデータをコピーする手間はかからない。同様に、写真やビデオなども家中で楽しめる。
LANでコンテンツをやり取りするときは、コンテンツのデータを保存している送信側コンピューターを「サーバー」、送られてきたデータを再生する受信側コンピューターを「クライアント」と呼ぶ(図2)。
AV機器でも再生可能
パソコン以外のLANにつながる機器もサーバーやクライアントとして利用できる。例えば、ノートパソコンよりも持ち運びやすいスマートフォンやタブレットをクライアントとして使えば、家中どこでもビデオや音楽を再生できる。
また、「DLNA(Digital Living Network Alliance)」に対応したテレビやレコーダーなどの家電製品がこの2~3年で飛躍的に増えている。DLNAは、家庭内LANにおいて、対応機器同士で音楽やビデオなどのコンテンツを伝送する規格だ。例えば、DLNA対応テレビをクライアントにすると、サーバーにしたパソコンにある動画ファイルを大画面で再生することなどができる。レコーダーをDLNAサーバーにすると、録画したテレビ番組を、パソコンやスマートフォンで視聴できる。
本特集では、3つのステップに分けて、家庭内LANの活用方法を紹介する(図3)。
まずパソコンだけのシンプルなLANを作り、さまざまなデータを共有する。「プリンターの共有」や「遠隔操作」など、パソコンならではの利用方法もある。次に、LANにスマートフォン/タブレットを加えて、パソコン内のコンテンツを再生する。最後は、DLNA対応テレビやレコーダーなどのAV家電も加えて、パソコンなどとコンテンツをやり取りする方法を紹介する。
通信が遅いと使えない
無線LANで注意したいのが通信速度だ。写真や音楽の場合はほぼ問題ないが、高画質のビデオを再生するとき、電波の状態によっては映像が途切れることがある。例えば、地上デジタル放送のデータをそのまま転送するには12M~15Mbpsの実効速度が必要だ。IEEE 802.11g規格だと遮蔽物が多かったり、距離が離れていたりしたときに厳しい。途切れがちなときは、通信の速いIEEE 802.11n規格に対応した無線LANルーターの利用や、有線LANでの接続を検討しよう。