3.11の東日本大震災を経て、ビジネス・プライベートにかかわらず、データバックアップの重要性は増すばかりだ。オリジナルデータを失う痛みを目の当たりにしたことで、バックアップに対する意識が企業のみならず個人ユーザーでも高まっていると言える。
 この特集は、バックアップを手動で行う方法と、ある程度まとまったデータ量がある場合に自動で行う方法(オンラインバックアップ)両方について、導入時と運用時のポイントを、バックアップ歴の長いSOHOオーナーの筆者が自らの体験を踏まえてまとめる。
 2本立ての構成で、前編はバックアップをDVD-Rを使って行う方法と保管のノウハウを、後編はオンラインバックアップの概要と、実際に使ったサービス「マカフィーオンラインバックアップ」(有料)の使い方の手順を紹介する。

 失われたら二度と取り戻せないデータのことを、今こそ考えるべきではないだろうか。家族のデジカメ写真が代表的なものだ。自分の生涯、場合によっては子どもに引き継いでいくほどの期間、消えないように守りたいデータである。

 守る基本はバックアップである。DVD-Rなどのメディアにバックアップすれば、パソコンのHDDやデジカメのメモリカードの破損や紛失に備えることができる。さらに、家が火事になったり、全壊する状況にも備えるならオンラインバックアップだ。筆者がこれまで蓄積したデータの総容量は110GB。これらを守るためにやっている方法を紹介しよう。

自分で守らなければ、消えてしまうデータがある

 データのバックアップをしない理由として、「そんなに価値のあるデータを持っていない」と言う人がいる。個人にとっては、金銭的な価値が高いデータは持っていないかもしれない。しかし、お金には換算できない価値のあるデータを持っていることに気付いてほしい。

 例えば、家族で撮ったデジカメ写真・ビデオ映像などが代表だ。こうしたプライベートなデータほど、コピーを他人に渡すことが少ない。オリジナルを失くしてしまえば、それまでだ。データを回復することができない。

 昔は、たまたま残っていた写真のネガフィルムやプリントを使って回復する道筋があった。最近は「デジタルデータが一つだけ」という状況である。

 東日本大震災の津波で家族と家財を失った被災者の方の手元に、たまたま見つかった一家の写真アルバムが届いた。悲しい中でも喜んでいる被災者の姿を、筆者はテレビや新聞で見て泣けてきた。

 大震災はめったに起こらない例だと言うなかれ。より日常生活に近いところでは、火事でパソコンが焼けたとか、デジカメとメモリカードを紛失したという理由で、かけがえのないデータを失くすことがある。自分にとって大切なデータは、自分で守るしかない。