LTEとは、世界の携帯電話事業者が2010年以降に導入することを目指している次世代通信システムの方式名です。第3世代移動体通信(3G)サービスの仕様作成を手掛ける国際業界団体である「3GPP」が、当初は「3G RAN LTE」(3G Radio Access Network Long Term Evolution:3G無線アクセスネットワークの長期的発展)と名付けましたが、現在では短縮してLTEという名称になっています。次世代の無線通信には米インテルなどが提唱する「モバイルWiMAX」もありますが、LTEはより多くの携帯電話事業者が採用を表明しています。

 現在、携帯電話事業者はHSPA(High Speed Packet Access)という通信方式を使って、最大7.2Mbpsのパケット通信サービスを提供しています。これに対して、LTEでは100Mbps以上と高速なサービスを実現することを目指しています(図1)。LTE向けの通信システム「Super 3G」を開発しているNTTドコモは、2008年3月に屋外実験で最大250Mbpsの通信に成功しました。

【LTEでは100Mbps以上のデータ通信が可能に】
図1 LTEでは、「OFDMA(直交周波数分割多元接続)」と呼ぶ方式を採用。従来より広い周波数帯域を使い、複数のアンテナを同時に使って高速化する「MIMO」技術を採用することで、100Mbps以上の高速通信を可能にする(写真はNTTドコモが開発した「Super 3G」の実験システム)
図1 LTEでは、「OFDMA(直交周波数分割多元接続)」と呼ぶ方式を採用。従来より広い周波数帯域を使い、複数のアンテナを同時に使って高速化する「MIMO」技術を採用することで、100Mbps以上の高速通信を可能にする(写真はNTTドコモが開発した「Super 3G」の実験システム)
[画像のクリックで拡大表示]

 LTEにおいては無線技術として、「OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)」や「MIMO(Multiple Input Multiple Output)」などを使い、通信システムで使う周波数帯域幅を従来より広げることで通信を高速化します。OFDMAはデータ信号を載せる複数の波を密にまとめて送る方式で、地上デジタル放送で同様の技術が使われています。

 さらに、基地局をつなぐ基幹有線ネットワークには全面的にIP技術を採用し、ネットワーク全体の伝送遅延を大幅に改善します。高音質なIP電話や、HD(高精細度)画質に対応するテレビ電話、コンテンツ受信などが可能になります(図2)。

【LTEで実現するアプリケーション】
図2 LTEは携帯電話だけでなく、パソコンへのHD(高精細度)コンテンツ配信やテレビ電話システムといった用途も想定している
図2 LTEは携帯電話だけでなく、パソコンへのHD(高精細度)コンテンツ配信やテレビ電話システムといった用途も想定している
[画像のクリックで拡大表示]

 ところで、LTEは3.9世代システムとも呼ばれています。これは3Gサービス用の周波数を使うけれども、通信技術は第4世代システムに近いという意味が込められています。