ワープロや表計算などのオフィスソフトの歴史を振り返ってみると、20年ほど前まではマイクロソフトのほかにロータスやジャストシステムなどのメーカーが独自仕様の製品で競い合っていた。ところがWindows 95が登場してからは、プリインストール(パソコンにインストールして出荷)という販売方法の影響もあり、マイクロソフトの「Office」シリーズ一辺倒に。そこで独自仕様のソフトに代わって登場したのが、Officeとデータの互換性を高め、さらに操作性もOfficeに似せた互換オフィスソフトだ。その歴史は意外と古く、本記事で紹介する「StarSuite」や「ThinkFree てがるオフィス」の原型は10年以上前にさかのぼる。最近、急に注目されるようになってきたのにはそれなりの理由がある。

 まず、Officeそのものの機能が飽和状態となって、新しいバージョンに乗り換える魅力が薄れてきたこと。特にOffice 2007では従来のメニューバーやツールバーが廃止され、「リボン」と称するタブ切り替え型のツールバーに刷新されたほか、標準ファイル形式も従来のOffice 97-2003形式とは違うものが採用された。乱暴に言えば、従来のOfficeユーザーにとってOffice 2007は互換オフィスに近い存在になってしまった。

 金融危機に伴うコスト削減の波がIT分野に及んだことも大きい。オフィスソフトもコスト削減の例外ではなくなったということだ。昨年から爆発的に売れ始めたネットブックの普及も追い風となった。低スペックのCPUや低解像度の液晶ディスプレイしか持たないネットブックでは、Office 2007は大げさすぎるきらいがある。だが、旧バージョンのOffice 2003はもう売っていないので、それに似た操作性や軽さを求めるなら互換オフィスしか選択肢がない。

図1 1024×600ドット液晶のネットブック(日本エイサーの「Aspire one」)でExcel 2007を使用中。最近はプラス1万円程度でマイクロソフトのOfficeが付属するネットブックもあるが、バージョンは2007だ
図1 1024×600ドット液晶のネットブック(日本エイサーの「Aspire one」)でExcel 2007を使用中。最近はプラス1万円程度でマイクロソフトのOfficeが付属するネットブックもあるが、バージョンは2007だ
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図2 こちらはExcel 2003……ではなく、それとそっくりの「Kingsoft Spreadsheets 2010」。互換オフィスの表計算ソフトだ。データ形式もExcel互換。販売終了したExcel 2003が欲しいなら選択肢となり得る
図2 こちらはExcel 2003……ではなく、それとそっくりの「Kingsoft Spreadsheets 2010」。互換オフィスの表計算ソフトだ。データ形式もExcel互換。販売終了したExcel 2003が欲しいなら選択肢となり得る
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