代金を先に払わせて“ドロン”

 Webサイトを通じて、ユーザー同士あるいはユーザーと業者が商品を売買する「ネットオークション」。金品がやり取りされるこのサービスを、詐欺師が放っておくはずはない。実際、ネットオークションのユーザーを狙った「オークション詐欺」が後を絶たない。

 もちろん、ネットオークション自体は危険なサービスではない。便利なサービスであり、大多数のユーザーは、何の問題もなく取引している。

 例えば、最大手のオークションサイト「Yahoo!オークション」を運営するヤフーによれば、被害件数を落札件数(取引件数)で割った「詐欺被害発生率」は、最近では0.003%。「毎週1回落札しているユーザーなら、詐欺に遭うのは500年に1回の計算になる」(ヤフーの今西氏)。

 とはいえ、詐欺に遭う確率はゼロではない。たとえ確率は小さくても、「自分が狙われるかもしれないと考えて、備えることが重要」(国民生活センター相談部の浦川有希氏)。そのためには、ほかの詐欺と同様に、詐欺師の手口を知ることが一番だ。

 事件簿にあるように、オークション詐欺の典型的な手口は、代金を先に払わせて、商品を送らないというもの。「オークション詐欺の99%はこの手口と言える」(ヤフーの今西氏)。また、「出品していたものとは異なる商品や偽物を送られたという相談も多い」(国民生活センターの浦川氏)。

オークション詐欺事件簿

被疑者(31歳無職)らは、2005年11月、オークションサイトの画面に表示されているIDからパスワードを推測。このパスワードを使ってオークションサイトに不正アクセス行為を行い、商品を売ると偽って多数の落札者から代金をだまし取った(2006年6月検挙、岩手)

被疑者(29歳無職)は、オークションサイトにおいて、有名ブランドのバッグなどを販売するといった虚偽の出品情報を複数掲示。購入を希望するユーザーに代金を支払わせてだましとった。被害総額は、バッグ12点の購入代金としておよそ1300万円(2006年10月検挙、東京)

被疑者(35歳無職)らは、興業チケットを偽造してオークションサイトに出品し、落札した被害者7人から被疑者の口座に代金を振り込ませ、計215万9500円を詐取した。加えて、被疑者らは、被害者の詐欺被害の発覚を遅らせる目的で、偽造チケット14枚を送付した(2006年12月検挙、群馬)

被疑者(34歳無職)らは、他人のユーザーIDを使って、オークションサイトに不正アクセス行為を行い、虚偽の出品情報を掲示。多数の落札者に被疑者らの口座に代金を振り込ませ、だまし取った。不正アクセス禁止法違反でも検挙(2007年11月検挙、大阪・栃木・山形・静岡・広島・和歌山)

 オークション詐欺に関連する最近の検挙事例。警察庁の情報などを基に編集部で作成。