スマートフォンという言葉は、もともとは米国など海外の携帯電話市場で使われ始めたものです。最近は日本でもスマートフォンが増えつつありますが、位置付けは米国などとは若干異なっています(下図)。

[画像のクリックで拡大表示]

 日本や韓国など一部の例外を除き、世界の携帯電話市場の大半では長年、音声通話とショートメール(SMS)程度しか使われてきませんでした。近年はカメラ機能付きの端末が増えていますが、それでも日本の端末と比べると大幅にシンプルです。

 そうした一般の携帯電話より大幅に機能を拡充したスマートフォンが、米国を中心とした先進国の市場において誕生しました。パソコン向けの長文の電子メールを読み書きできる、Webサイトやオフィス文書を開ける、タッチパネル付き液晶で操作や文字入力が可能、企業内の情報システムに接続するクライアントソフトの実装が可能、などの特徴があります。パソコンと同様のQWERTY配列のキーボードを備える機種もあり、大量の文字入力も容易です。

 一方、日本市場においては、機能の豊富さという面では、一般の携帯電話とスマートフォンに大きな違いはありません。一般の携帯電話も上述のような各機能を備えるほか、「iモード」「写メール」「おサイフケータイ」など、携帯電話ならではの付加機能も多くあります。

 日本市場では多機能な携帯電話というより、自在にカスタマイズできる小型端末としてスマートフォンが位置付けられているといえます。その意味では、かつての携帯情報端末(PDA)の延長線にある製品と見るのが自然でしょう。

 日本におけるスマートフォンの火付け役となったのは、ウィルコムが2005年に発売した「W-ZERO3」です。この製品は、OSにWindows Mobileを採用し、その上でアプリケーションソフトを起動して使うという、パソコンと同様の作法を採り入れました。W-ZERO3をユーザーがカスタマイズできるフリーソフトウエアが多数開発され、モバイル向け端末を最大限使いこなしたいパワーユーザーから好評を博しました。大型の液晶ディスプレイや、縦横どちら向きにも使える機構も、操作の自由度を高める効果がありました。

 最近では、スマートフォンと携帯電話の境目がゆるやかになってきています。Windows Mobileを採用しつつ、本体サイズは一般の携帯電話と同程度という製品が海外で徐々に出始めているのです。