ソフトの貸与や譲渡 ソフトは売れる?貸せる?あげられる?

 1本のソフトを複数台のパソコンにインストールできるか、他人に貸せるのか──。過去に、こんな疑問を抱いた経験はないだろうか。

 パソコンにまつわる権利の中で、最も身近なのがソフトウエアの使用権だろう。パソコン本体と異なり、ソフトウエアは実体がないだけにややこしい。本特集ではまず、このテーマについて考えてみよう。最初に取り上げるのは、ソフトウエアの譲渡や貸与、売却ができるのか、という問題だ。

答えは使用許諾契約書に

 その答えは、各ソフトをインストールする際に表示される、「使用許諾契約書」の画面に書いてある。使用許諾契約書(ライセンス条項などとも呼ばれる)とは、メーカーとユーザーの間で結ばれる契約の内容を示したもの。

 実は我々がソフトを購入しても、多くの場合はソフトそのものを手に入れられるわけではない。一定の条件下でそのソフトを使うための許諾をメーカーから得る、つまりソフトを使う「権利」を購入しているのだ(図1)。ソフトウエアは容易にコピーできるため、ソフトそのものの所有権をユーザーに与えてしまっては、ソフト会社は立ちゆかない。そこでソフト業界は一般的に、こうした販売方法を採っている。

図1 ソフトウエアを購入しても、手に入るのはソフトウエアそのものではなく、それを使う権利であることがほとんど。その権利の範囲がどこまでかは、使用許諾契約書に記載されている。これに同意しなければ、ソフトウエアをインストールできないことが多い
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 使用許諾契約書は、インストール時などに必ず表示されるのでおなじみだろう。長文で難解そうに見えるため、ほとんど読まないユーザーも多いようだ(図2)。だがこの中には、ソフトを使う上で重要な事柄が多数含まれている。これを破ると、メーカーから損害賠償を請求されるなどの可能性がある。法律面でも、著作権侵害で罪に問われかねない。

【契約書は読まれていない】
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図2 ソフトウエアのインストール時に、使用許諾契約書を読んでいるかどうかを尋ねたアンケートの結果。6割を超すユーザーが、「ほとんど読まない」と答えた

 図3に、Windows Vista Ultimateのパッケージ版に付属する、使用許諾契約書の一部を示した。これを読むと、Vista Ultimateを有償または無償で他人に貸すことは明確に禁止されている。一方、譲渡については、条件付きで認められている。Vista Ultimateを購入した最初のユーザーが、1度だけ他人に譲ることは可能だ。自分のパソコンは譲らずにソフトだけを譲る際には、自分のパソコンからアンインストールすることが必要。使わないからといって、ソフトをパソコン内に残しておいてはならない。

図3 Windows Vista Ultimateのパッケージ版では、貸与は禁止、譲渡は条件付きで認められている。このように、使用許諾契約書は難解そうに見えても、意外に表現は分かりやすいことが多い
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