おおき・じゅんと:1987年群馬県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。大学在学中に手話サークルを創設。「聴覚障害者と聴者が本当の意味で対等な世の中」の実現を目指して、2008年に手話ビジネスを展開する企業、シュアールを設立した。手話通訳士の資格も持つ。(撮影:稲垣 純也)
おおき・じゅんと:1987年群馬県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。大学在学中に手話サークルを創設。「聴覚障害者と聴者が本当の意味で対等な世の中」の実現を目指して、2008年に手話ビジネスを展開する企業、シュアールを設立した。手話通訳士の資格も持つ。(撮影:稲垣 純也)
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 手の形や位置を指定すると、それに該当する手話の動画と意味が見られる──大木氏が2013年8月に正式公開したネットサービス「SLinto Dictionary」は、手話界にとって画期的な存在だ。言葉を基にその手話表現を調べることは従来もできたが、手話表現から意味を調べるのは難しかった。いわば「和英辞典はあるのに、英和辞典がない世界」。ITを活用し、初の“英和辞典”を誕生させた。

 手話との出合いは中学生のとき。たまたまテレビで目にした手話の、言語としての美しさに感動した。大学入学後、自ら手話サークルを立ち上げ、本格的に手話に関わるようになる。手話で楽しめる娯楽が少ないことに問題意識を持ち、学生団体をつくって手話番組を制作・配信する活動も始めた。

 そんな中で、聴覚障害者をめぐるさまざまな問題を目の当たりにする。例えば電話が使えないため、緊急時にも110番ができない。駅などの窓口で込み入った手続きが必要なときも、なかなかスムーズに進められない。

2013年8月に正式公開した辞典サービス「SLinto Dictionary」。画面上のキーボードで手の形と位置を指定すると(左)、該当する手話の意味や動画が検索できる(右)。ユーザーの力で辞典を充実させていけるような仕組みを用意している
2013年8月に正式公開した辞典サービス「SLinto Dictionary」。画面上のキーボードで手の形と位置を指定すると(左)、該当する手話の意味や動画が検索できる(右)。ユーザーの力で辞典を充実させていけるような仕組みを用意している
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SLinto Dictionaryの開発費用を確保するため、クラウドファンディングの手法で寄付を呼びかけた。最終的に、目標額の2倍近くが集まった
SLinto Dictionaryの開発費用を確保するため、クラウドファンディングの手法で寄付を呼びかけた。最終的に、目標額の2倍近くが集まった
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