たなか・ひろや:京都大学総合人間学部卒業、東京大学大学院工学系研究科博士後期課程修了。博士(工学)。2005年慶應義塾大学環境情報学部専任講師、2008年同准教授。2010年米マサチューセッツ工科大学(MIT)建築学科客員研究員。新しいものづくりの世界的ネットワーク「ファブラボ」の日本コミュニティ発起人。(撮影:木村 輝)
たなか・ひろや:京都大学総合人間学部卒業、東京大学大学院工学系研究科博士後期課程修了。博士(工学)。2005年慶應義塾大学環境情報学部専任講師、2008年同准教授。2010年米マサチューセッツ工科大学(MIT)建築学科客員研究員。新しいものづくりの世界的ネットワーク「ファブラボ」の日本コミュニティ発起人。(撮影:木村 輝)
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 革新的な技術は15年間隔で現れる。1980年がパソコン、1995年はインターネット。2010年に登場した新潮流がパーソナルファブリケーションだ──。田中浩也氏はそう断言する。

 かつて大型計算機がパソコンに進化したことで、誰でも使えるようになった。それと同じように、工場にしかなかった高価な工作機械が、一家に一台と普及していく。そんな“ファブ”時代が迫っているという。「パソコンが登場した頃は、おもちゃだよね、何の役に立つのか分からないと批判された。最近の低価格3Dプリンターがまさにその状態に近い」。確かに、まだ黎明(れいめい)期かもしれない。それでも、データを物質として出力できる新世代の工作機械は、デジタル世界に閉じていた垣根を取り払い、世の中を大きく変化させるインパクトを持っている。

 そう予見した田中氏は、米国のマサチューセッツ工科大学を発祥として、世界に広がるものづくり工房「ファブラボ」を日本に持ち込んだ。2011年に神奈川県鎌倉市と茨城県つくば市に日本初のファブラボが開設され、現在では全国6カ所に増えている。

2011年に開設した「ファブラボ鎌倉」。125年前に建設された蔵を再生した建物を使用している。皮や木材などの素材を生かした伝統的な技能と最新の工作機械のものづくりを融合させる取り組みを推進している
2011年に開設した「ファブラボ鎌倉」。125年前に建設された蔵を再生した建物を使用している。皮や木材などの素材を生かした伝統的な技能と最新の工作機械のものづくりを融合させる取り組みを推進している
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