革新的な技術は15年間隔で現れる。1980年がパソコン、1995年はインターネット。2010年に登場した新潮流がパーソナルファブリケーションだ──。田中浩也氏はそう断言する。
かつて大型計算機がパソコンに進化したことで、誰でも使えるようになった。それと同じように、工場にしかなかった高価な工作機械が、一家に一台と普及していく。そんな“ファブ”時代が迫っているという。「パソコンが登場した頃は、おもちゃだよね、何の役に立つのか分からないと批判された。最近の低価格3Dプリンターがまさにその状態に近い」。確かに、まだ黎明(れいめい)期かもしれない。それでも、データを物質として出力できる新世代の工作機械は、デジタル世界に閉じていた垣根を取り払い、世の中を大きく変化させるインパクトを持っている。
そう予見した田中氏は、米国のマサチューセッツ工科大学を発祥として、世界に広がるものづくり工房「ファブラボ」を日本に持ち込んだ。2011年に神奈川県鎌倉市と茨城県つくば市に日本初のファブラボが開設され、現在では全国6カ所に増えている。