日経パソコンは、パソコンを購入したユーザーが満足度を評価するアンケート調査を実施し、その内容を2013年9月9日号の「パソコン満足度ランキング」にまとめた。ソニーはノート部門で2位、デスクトップで3位と上位に食い込んだ。特にノートパソコンでは、本体の薄さなどの携帯性のほか、デザイン性の評価が高かった。同社ではユーザーの満足度を高めるために何を重視しているのか。VAIO&Mobile事業本部PC事業部商品1部統括部長の林薫氏に話を聞いた。

■ノートパソコンを開発する上で重視していることは何ですか。

 ノートパソコンの薄さと軽さは、まだユーザーが求めている領域に達していないと考えています。今は技術的に限界があるかもしれませんが、もう少し先にたどり着けるところがあるのではないでしょうか。

 徹底的にモバイルにこだわった過去の製品としては、2003年に投入した「バイオノート505エクストリーム」(通称は「X505」)があります。薄型本体にカーボンファイバーを採用し、重さは785~825gと世界最軽量としました。画面は10.4型でやや小さかったのですが、今のUltrabookと比べても、ひけをとらない製品だったと自負しています。

 こうしたモバイルの理想をとことん追求した製品を今後も目指したいのです。もっと薄く軽く、電池の「スタミナ」にもこだわっていきます。持ち運ぶ際に、人の目に触れるものだからデザイン性の高さも必須となります。

■デザインの良さを支持するユーザーの声が多いようです。

 デザイナーの構想とエンジニアリングを融合させるのがソニーの文化です。どちらかが強いというわけではなく、基本構想を一緒に考えます。発泡性の樹脂を使った黒いモック(模型)を作り、デザイナーと目指す方向性を共有します。机上の議論で終わらせず、モックを手に取って議論することで、実際にインパクトがあるかないかを検証します。

 「機能美」も評価を受けた要因ではないでしょうか。単に薄く軽くするだけではなく、機能性を持っていなければならないという考えで開発を進めています。例えば、2012年10月に発売した「VAIO Duo 11」では、画面をスライドさせるためのヒンジなど機構的な部分も含めて、商品構想の全体的なデザインを作りこんでみました。

■パソコンとしてもタブレットとしても使えるハイブリッド型の中で「VAIO Duo 11」は人気製品でした。

 Windows 8で目指している世界観にマッチした製品だったと言えるでしょう。ただ、単にタブレットとパソコンが“ニコイチ”になったおトクな1台です、とは言いたくないのです。パソコンとしての機能に基軸を置きながら、Windows 8の世界を取り込み、パソコンの可能性を広げる製品にしたかったのです。高い処理能力と十分なストレージを生かしつつ、キーボード・ペン・タッチと3種類のユーザーインタフェースで活用の幅を広げる。そうしたコンセプトが先進的なユーザーに受け入れてもらえたのでしょう。

 実はVAIO Duoの構想はずっと前から温めていました。ユーザーがパソコンを使って、もっと創造性を発揮できるようにするには、何をしたらいいのか。細かいストレスを感じないようにするためには、重いファイルも難なく扱えて、起動時間も短くなければいけません。さらにペンやタッチを取り入れ、ユーザーが自由にアイデアを形にできるようにしたい。でも、Windows 7の時代はタッチやペンで快適な操作性を実現するのは困難がありました。Windows 8が出て、これならやりたいこと実現できると完成させたのです。単にWindows 8機に合わせてハイブリッド型に仕立てただけの製品とは違うのです。