やまこし・くみこ:子育てをしながらパソコン学校に通い、パソコン講師の資格を取得。2001年から長野県長野市で教職員向けのパソコン講師を務める。2003年からは同県千曲市の教育委員会に勤務し、校務の情報化や教職員研修、小中学校での児童・生徒の指導などに携わる。2012年、東京都児童相談センターの一時保護所で、子どもたちへの支援を開始。2013年5月にNPO法人を設立。ICTを通じた学力向上を目指して活動を続けている(撮影:稲垣 純也)
やまこし・くみこ:子育てをしながらパソコン学校に通い、パソコン講師の資格を取得。2001年から長野県長野市で教職員向けのパソコン講師を務める。2003年からは同県千曲市の教育委員会に勤務し、校務の情報化や教職員研修、小中学校での児童・生徒の指導などに携わる。2012年、東京都児童相談センターの一時保護所で、子どもたちへの支援を開始。2013年5月にNPO法人を設立。ICTを通じた学力向上を目指して活動を続けている(撮影:稲垣 純也)
[画像のクリックで拡大表示]

 「ICT(情報通信技術)は、学力向上に役立つ」。長年、教育現場でICT活用支援に取り組んできた山越久美子氏の強い実感だ。その恩恵を届けるべく、今、足を運ぶのが、東京都児童相談センターの一時保護所である。

 一時保護所とは、虐待や育児放棄などに遭った子どもが、一時的に保護される施設。基本的に学校には通えず、十分な学習機会が与えられているとは言い難い。「せめて、人生に必要な基礎的学力だけでも身に付けてほしい」。そんな思いで、iPadを使った学習支援を続けている。

 これまで落ち着いて学習できる環境になかった子も少なくない。習熟度はまちまちで、一人ひとりに合わせた指導が必要だ。これは、まさにICTの得意とするところ。できる子は自分のペースで前に進めるし、理解が不足している子は前に戻って復習できる。

 戻るべき箇所を見つけやすいのもICTの利点。「ICTを活用すると、“分からないところ”が分かる。誤答の傾向から、つまずいている箇所が見えてくる」。例えば2桁の掛け算ができない原因が、繰り上がりの理解不足にあることが分かれば、そこから復習し直せる。「子どもは誰でも、正解するとうれしい。iPadのような機器では答えを書き込めばすぐに“○”が表示されるため、集中して取り組める」。

iPadを用いた学習の様子。計算や漢字の書き取りなどの学習アプリを用いて、問題に取り組む。目下の悩みは、十分な教材がないこと。写真は、小学生向けに開催したiPad講座のもの。一時保護所でも、このような雰囲気で学習を進めている
iPadを用いた学習の様子。計算や漢字の書き取りなどの学習アプリを用いて、問題に取り組む。目下の悩みは、十分な教材がないこと。写真は、小学生向けに開催したiPad講座のもの。一時保護所でも、このような雰囲気で学習を進めている
[画像のクリックで拡大表示]

iPadを用いた学習方法を、学生たちが独自に考案。その効果を検証し、レポートにまとめている
iPadを用いた学習方法を、学生たちが独自に考案。その効果を検証し、レポートにまとめている
[画像のクリックで拡大表示]