さんかい・よしゆき:1987年に筑波大学大学院工学研究科博士課程修了。筑波大学講師、助教授、米国のベイラー医科大学客員教授を経て、筑波大学大学院システム情報工学研究科教授。身体機能を補助・増幅・拡張できる「ロボットスーツHAL(Hybrid Assistive Limb)」を開発。2004年にHALの研究開発と普及を推進する大学発ベンチャー企業CYBERDYNEを設立してCEOに就任する。(撮影:稲垣 純也)
さんかい・よしゆき:1987年に筑波大学大学院工学研究科博士課程修了。筑波大学講師、助教授、米国のベイラー医科大学客員教授を経て、筑波大学大学院システム情報工学研究科教授。身体機能を補助・増幅・拡張できる「ロボットスーツHAL(Hybrid Assistive Limb)」を開発。2004年にHALの研究開発と普及を推進する大学発ベンチャー企業CYBERDYNEを設立してCEOに就任する。(撮影:稲垣 純也)
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 大きくなったら科学者になろうと思う。自分の研究所でロボットを、よりすぐれた物にしようと思う──。アイザック・アシモフのSF小説「われはロボット」に胸を踊らせた山海嘉之少年は、小学5年生の時こんな作文を書いた。それから40年余り。未来は自分の手で開拓するという情熱は変わらない。

 博士号を取ると、以前から計画していた医療分野との連携を推進。人と機械と情報系の技術を融合・複合させたサイバニクスという全く新しい学術分野を確立した。

 サイバニクス研究で生み出された成果の一つが「ロボットスーツHAL」である。人が体を動かす際には脳から筋肉に信号が伝わる。このとき微弱な生体電位信号が皮膚表面で検知できる。これを基に関節のモーターが人と一体となって力を伝える。脳や神経の障害で歩行困難となった人が、HALを装着して運動すると、脳の命令通りに体が動く。そして、「動いた」という反応が神経にフィードバックされる。このプロセスを繰り返すことで、脳・神経・筋系の機能改善が促進されるという仮説を立て、基礎研究を経てハードウエアの改良とデータ収集に取り組んだ。

2010年に開発した福祉用のロボットスーツHAL。腰の部分にバッテリーを搭載しており、センサーで皮膚表面の生体電位信号を検知して、モーターを動かす。福祉施設などにレンタルしている
2010年に開発した福祉用のロボットスーツHAL。腰の部分にバッテリーを搭載しており、センサーで皮膚表面の生体電位信号を検知して、モーターを動かす。福祉施設などにレンタルしている
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2003年の「HAL-3」。関節の軸部分が横に飛び出ている形状となっていた。背中のケース内部にバッテリーを格納している
2003年の「HAL-3」。関節の軸部分が横に飛び出ている形状となっていた。背中のケース内部にバッテリーを格納している
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