わたなべ・ひでのり:1974年大分県生まれ。1996年東京理科大学理工学部建築学科卒業、1998年同大学院修了。ソニー・コンピュータエンタテインメントなどを経て、株式会社フォトンを創業。インターネット技術を応用したアート作品やサービスを多数生み出す。2008年より現職。フォトンのスーパーバイザー兼取締役も務める。(撮影:稲垣 純也)
わたなべ・ひでのり:1974年大分県生まれ。1996年東京理科大学理工学部建築学科卒業、1998年同大学院修了。ソニー・コンピュータエンタテインメントなどを経て、株式会社フォトンを創業。インターネット技術を応用したアート作品やサービスを多数生み出す。2008年より現職。フォトンのスーパーバイザー兼取締役も務める。(撮影:稲垣 純也)
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 写真から当時の状況を思い浮かべ、そこに生きる人の顔を見て、生の証言を聞く。渡邉氏がGoogle Earth上に構築する数々のデジタルアーカイブからは、一人ひとりの声の重みが伝わってくる。

 活動の原点は、最初に手がけた「Tuvalu Visualization Project」。南太平洋の島国ツバルの人々の声を、地図上に集めたものだ。地球温暖化による海面上昇で危機に瀕する国というイメージは、そこに住む人々の話を聞いて大きく変化した。「現地の人は、環境のことばかり考えているわけではない。温暖化は、ツバルの問題の一端でしかなかった」。個人の声や島のあちこちの写真を積み重ねることで、マクロな視点では見えない国の姿が表現できることに気付いた。

 このプロジェクトを、長崎のある若者が目にする。彼から1通のメールが届き、被爆者の声を後世に伝える「ナガサキ・アーカイブ」が生まれた。それがさらなるオファーを呼び、広島の原爆や沖縄戦などのアーカイブにつながった。「自分が戦争を中心テーマにするなんて、思わなかった。人との出会いに導かれた」。写真集めに奔走する地元の実業家や教師、被爆者の話を聞いて歩く現地の高校生。多くの人の力の結晶がアーカイブだ、と話す。

長崎の原爆被害の写真や被爆者の証言を集めた「<a href=ナガサキ・アーカイブ」。被爆直後のカラー写真など貴重な資料も見られる(左)。スマートフォン向けのアプリも用意(右)。現地で起動すると、そこで被爆した人の証言や写真などが風景に重なる">
長崎の原爆被害の写真や被爆者の証言を集めた「ナガサキ・アーカイブ」。被爆直後のカラー写真など貴重な資料も見られる(左)。スマートフォン向けのアプリも用意(右)。現地で起動すると、そこで被爆した人の証言や写真などが風景に重なる
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