カメラを持った観客がたくさんいる。フラッシュも光る。「動画・写真などはお好きにお撮りください」──。通常なら撮影禁止となる舞台を“解禁”した狂言の名門・茂山家。このほど京都などで催行した3公演を撮影自由としたところ、観客が撮った動画が多数、動画投稿サイトにアップロードされた。
「国民の9割は狂言を見たことがないのでは。面白いと思ってもらえるきっかけをつくりたい」と語るのは、「日本一よくしゃべる狂言師」を自任する同門の千三郎氏だ。「写真撮り放題」は既に10年ほど前に試したが、動画は初めて。観客が録画しやすいよう、1曲20~30分の演目を5分ほどに短くして構成したり、照明を上げたりして臨んだ。“撮り時”も都度説明した。「カメラを通して観客の視線が分かるのが興味深い。間違えると世界に知られるので緊張する」のが今回演じた感想だ。反応は上々。「笑うと手ぶれする。撮り直したい」といった声が寄せられた。
動画の不正利用など心配はあったが、メリットの方が大きいと判断した。関係者の間では異論もあるとしつつ、「何事もやってみたいと家の者たちはノリノリ。全員一致で決まった」という。