「1人でも多くの人に喜んでほしい。人々の幸福を最大化したい」。そんな夢を抱きながら、サッカーのジャーナリストとして世界各国を取材し、雑誌に記事を書いた。それでも、何か物足りない。1カ月間、根を詰めて原稿を書き続けても本が1冊できるかできないか。このやり方ではいつまでたっても人を幸せにできない。
ネットの世界なら夢に近づける。Webサイトのプロデューサーになろう──。28歳になっていた孫良氏は、転身を決意し、ネット企業の門をたたく。未経験の分野で就職は苦労したものの、1社から採用を受けた。そこでは携帯電話向けのサービスを担当し、厳しい上司にしごかれた。評価は数字で表れるから言い訳できない。アクセス数が落ちれば「使われていないじゃないか」と即座に指摘を受けた。
1年も経過すると利用者を引き付けるためのノウハウが徐々に身に付いてきた。その頃から、急激に普及し始めたiPhoneのアプリを手がける。企画や調査、開発やコンテンツ制作など協力者の集め方、アプリの名称から画面デザインまで。あらゆる面で人気獲得のための秘訣を注ぎ込んだ。その結果、作ったアプリはダウンロードランキング10位以内に次々と入るようになった。