真横に並んでいるはずなのに、右上がりや右下がりに傾いて見える文字列を知っているだろうか。2005年にインターネットの掲示板などで流行した。例えば、「コニア画」といった文字列を連続して並べると、錯覚によって傾いて見える。このような文字列を「文字列傾斜錯視」と呼び、研究対象にした数学者がいる。東京大学大学院教授の新井仁之氏だ。
新井氏は2001年ころから、目の錯覚、いわゆる錯視を数学的に解明する研究を続けている。もともとは純粋数学の研究者。視覚の研究を始めたきっかけは、錯視を数学的に解明しようとした文献を目にしたことだという。
その文献では、フーリエ解析と呼ばれる手法で解明しようとしたが、うまくいかなかった。そこで、新井氏が専門としているウェーブレット解析という手法を使ってみたところ手応えを感じ、研究を開始した。
その新井氏の目にとまったのが、当時ネットをにぎわせていた文字列傾斜錯視。「文字だけで構成した錯視は世界的に見ても珍しい」と興味を持った。