レノボとの合弁を生かしたUltrabookを7月に投入する

 2011年7月、日本のパソコン市場を30年以上リードしてきたNECと、中国最大のパソコンメーカーのレノボ・グループが、合弁会社のレノボNECホールディングスを設立した。その100%子会社として、NECのパソコン事業を引き継いだのがNECパーソナルコンピュータ。規模の拡大による部品調達コストの削減や、技術協力の推進によって、レノボ・ジャパンとの合計で25%前後の国内シェアを3年以内に30%に伸ばすという高い目標を掲げた。一方、合弁会社の出資比率はレノボの方が51%と高く、NECの独自性が失われるとの懸念も一部にあった。統合の効果は出ているのか、NECのパソコンはどうなるのか、1月からNECパーソナルコンピュータの社長に就任した高塚栄氏に聞いた。

高塚 栄(たかつか・さかえ):1953年生まれ。1976年、日本電気(NEC)に入社。1988年にパーソナルコンピュータ販売推進本部計画部計画課長に就任しパソコン事業に取り組む。2001年、NECカスタマックス マーケティング本部長。2003年、NECパーソナルプロダクツ設立とともにPC事業本部営業事業部長に就任。執行役員常務兼PC事業本部長などを経て、2012年1月より現職(撮影:稲垣 純也)
高塚 栄(たかつか・さかえ):1953年生まれ。1976年、日本電気(NEC)に入社。1988年にパーソナルコンピュータ販売推進本部計画部計画課長に就任しパソコン事業に取り組む。2001年、NECカスタマックス マーケティング本部長。2003年、NECパーソナルプロダクツ設立とともにPC事業本部営業事業部長に就任。執行役員常務兼PC事業本部長などを経て、2012年1月より現職(撮影:稲垣 純也)
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■合弁から半年、統合の手応えは。

 おかげさまで好調です。普通、メーカーが買収や合弁を実施すると、直後の数年は販売台数が落ち込みます。でも我々は、売上やシェアを落としたくありませんでした。それには、まず販売店やユーザーの皆さんに「統合してもNECの良いところは変わらない」ときちんと伝えることが重要だと考えました。

 そのため、レノボNECホールディングス会長でもある、レノボ・ジャパンのロードリック・ラピン社長のアイデアで「NECのパソコン事業で変わる部分、変えない部分、強化する部分」を説明するパンフレットを作り、それを持った社員が約3000ある販売店の方々に説明をして回りました。これには新商品の説明と同じくらいの手間を掛けています。また、新聞広告などを通じて、ユーザーの方々にも「NECのパソコンは変わらない」とアピールしました。

 もちろん、そこまで言って変わってしまったのでは信頼を失います。約束したことは守るように心掛けました。

■統合作業はスムーズに進みましたか。

 この半年ほど、週に3回はレノボ側と情報交換をしています。これまでライバルだったのですから、全てうまくいっているとは言いません。話し合いをしていても、さまざまなところで違和感を感じます。でも、違和感を嫌悪感にするのではなく、興味につなげればいいんです。

 例えば、NECとレノボはパソコンの売り方が違います。NECは家電量販店との直接取引が中心ですが、レノボは販売代理店経由で売っています。これまでは社員が直接量販店に行くのが当たり前と思っていましたが、販売代理店にも良いところがあります。同様に、開発やサポートなどの部門でも、自分たちと違うやり方を知ることで、うまくいっている部分や改善すべき部分が見えてきます。互いの長所を取り入れる良い機会です。

■規模の拡大で、部品などの調達コストは下がりましたか。

 当初予想していたくらいのコスト削減効果はありました。価格競争をするつもりはありませんが、他社に負けない価格を付けつつ、高付加価値商品を追求できるようになったと思います。

 一方、NECのパソコンにユーザーが求めているのは、「品質が良い」「故障時の対応がきちんとしている」といったことです。さらに安心感を持っていただくため、合弁によるコスト削減効果をまずはサポートに投資しました。これまで、購入後1年だけ無料だった電話サポートを、2012年からは2年目以降も無料にしています。パソコンは生活家電とは異なり、購入後にだんだん用途が広がっていく商品です。例えば、パソコンを買った人が数年後にスマートフォンを買うと、できることや分からないことが一気に増えます。その時点でサポートが使えれば、とても役立つはずです。そのような、将来の用途拡大にも対応できる安心感をお客様に感じていただきたいです。