むかしむかし、あるところに──。親子で就寝前に過ごす、やすらぎのひととき。かつては代々伝わる民話が子供を楽しませ、親子の絆を深めるメディアの役目を担っていた。いつしかそれは紙の絵本へと切り替わる。
では、現代のメディアであるインターネットやパソコンは、親と子をつなぐ絆となり得るのか。このテーマに取り組むクリエイターが朝倉民枝氏である。教育上の配慮でインターネットやパソコンから子供を遠ざけている親もいる。しかし、現代社会の中では一生無縁ではいられない。そうであれば「子供とネットとの出会いを、もっとポジティブなものにしたい」と考えた。
既存のコンテンツを探しても、これはというものが見つからない。こうなったら自分で作るしかない。企業の研究所から離れて独立後、2002年にはWebブラウザーで楽しめるコンテンツ「ピッケのおうち」を公表した。
子ブタのピッケが暮らす家や森の中を探検し、マウス操作で画面をクリックすると画面の動きや音の変化を楽しめる。親が自分の言葉で子供に語りかけることを想定し、画面に表示するセリフはできるだけ少なくした。子供が一人でパソコンに向かう「子守りソフトにはしたくなかった」からだ。