おいなが・ゆうじ1951年:生まれ。1974年、北海道大学理学部卒、同年富士通入社。大型汎用計算機およびスーパーコンピューターのアーキテクチャー/ハードウエアの開発に従事。現在は、次世代テクニカルコンピューティング開発本部長を務める。(撮影:稲垣 純也)
おいなが・ゆうじ1951年:生まれ。1974年、北海道大学理学部卒、同年富士通入社。大型汎用計算機およびスーパーコンピューターのアーキテクチャー/ハードウエアの開発に従事。現在は、次世代テクニカルコンピューティング開発本部長を務める。(撮影:稲垣 純也)
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 日本の大型計算機が処理能力世界一に──。2011年6月、コンピューターの計算速度を格付けする「TOP500」で、富士通と理化学研究所が共同開発したスーパーコンピューター「京」が1位を獲得。11月に発表された新たなランキングでも1位を維持し、その快挙は報道で大きく取り上げられた。

 京の開発に携わる富士通の追永勇次氏は、世界一獲得の原動力について、長年の技術の蓄積を挙げる。「当社初のスーパーコンピューターを1981年に発表して以来、30年に及ぶ開発の歴史がある。CPUなどのハードウエアだけでなく、ソフトウエアの実行効率も性能を左右する。それらのノウハウは一朝一夕では獲得できない」と強調した。

 京の開発は、文部科学省が国家的事業の「次世代スーパーコンピュータプロジェクト」として呼びかけ、2005年から始まった。8万個以上のCPUをネットワークでつなぐ巨大システムである京の開発は苦難の連続。ネットワークを制御するプログラムは60万行に達し、部品も膨大な数に上る。「わずかなミスが致命的欠陥につながる。仕様変更は億円単位の損失となる」。

神戸市の理化学研究所内に設置された世界最高速のスーパーコンピューター「京」。毎秒1京回(1京は1兆の1万倍)以上の計算を実行できるという(写真は理化学研究所提供)
神戸市の理化学研究所内に設置された世界最高速のスーパーコンピューター「京」。毎秒1京回(1京は1兆の1万倍)以上の計算を実行できるという(写真は理化学研究所提供)
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