iPadに映し出されたハトが、一瞬にして画面から飛び出し、手に乗る。手に持ったカードを、すっとiPadの画面の中に入れてしまう。マジックと分かっていても、目を疑う驚きがある。しかも、このパフォーマンスを昨年のiPad発売初日に、アップルストア銀座の前でやってしまったのだ。話題にならないはずがない。YouTubeにアップロードされた動画は、1日にして世界各地からアクセスが集中する人気コンテンツとなった。その後はテレビやイベントに引っ張りだこ──。
iPadマジックで一躍有名になった内田伸哉氏。大学時代からプロマジシャンとして数多くの実演をこなしてきたが、現在の本業は広告代理店に勤めるコピーライターである。しかし、単なる趣味や余技でiPadマジックに取り組んだわけではない。
「これは企画の力試し。どうやったら世界中から注目を集められるか。その方法を考えに考え、話題のデジタルツールとマジックを組み合わせたら話題になると気付いた」と言う。検索サイトで関心の高い言葉を探したところ、「iPad」と出た。日本語の壁を取り払うため、見た目で伝わるマジックにする。そして動画投稿サイトで全世界にアピールする。もくろみは見事に当たり、「発売前からiPad大のボール紙で練習を重ねた」努力が実った。