大胆な花柄や上品なツイード、ゴージャスなラメ入り……オンラインショップ「SHOKO MIYAMOTO」には、色取り取りの一眼レフ用カメラケースが並ぶ。量販店などのカメラ売り場とは大違い。実用一点張り、質実剛健なカメラケースのイメージを覆す個性的な品々だ。

 これらのカメラケースはすべて、インドネシア バリ島在住の宮本詳子さんがデザインし、バリ島の職人が一点一点手作りしている。実はこの宮本さん、「Yahoo! BB」のプロモーション部長を辞めてバリ島に移住、デザイナーに転身した経歴の持ち主である。

 個性的なカメラケースを作った理由と自身が歩んできた道について、話を聞いた。

■カメラケースを作り始めたきっかけを聞かせてください。

 「SHOKO MIYAMOTO」は、ママ向けに素敵な商品を作りたいということで立ち上げました。初期の商品はマザーズバッグなどです。カメラケースを出したのは、自分が欲しかったから。私自身、カメラが好きで、以前から旅行などではよく写真を撮っていたのですが、女性が素敵と思えるカメラケースがないのが不満でした。いずれ出てくるだろうと思っていたけれど、それから5年たっても出てこない。「これはもう自分で作るしかないな」と思ったんです。

 カメラケースの内布には撥水(はっすい)性があり、レンズに繊維が付着しにくい化学繊維を使ったり、ケース先端のレンズ部分はスポンジとバッグ底用の芯地で保護したりと、機能性にもこだわっています。ただ、最初は苦労しました。バリ島の工房をいくつも回って試作品を作ってもらいましたが、一眼レフの形は複雑で合わせるのが難しく、満足のいくものがなかなかできませんでしたね。

■今は中心的な商品になっているようですね。

 最初に売り出したマザーズバッグは、サイトに載せてから売れるまで2カ月近くかかりました。それに対して、カメラケースはたったの3日。子供の写真を撮るのに一眼レフを愛用しているママたちはもちろんですが、最近は男性からのオーダーも増えています。人気商品に育ちました。

■ソフトバンクBBのYahoo!BBプロモーション部長から転身したと聞きました。

 Yahoo!BBの立ち上げからプロモーションを担当していました。当時は昼も夜もないほど忙しかったですね。辞めたのは、4年間、突っ走って疲れてしまったというのが一つ。もう一つは、結婚したことです。いずれ子供を産んだとき、この激務の中で子育てができるのかと悩み、辞めようと考えたのです。同じようにソフトバンクBBで働いていた夫に話したら、「じゃあ、自分も辞めようかな」と。夫が辞めることについて、孫正義社長は前日まで冗談だと思っていたようですが……。

 当初は新婚旅行を終えたら、新しい仕事に就くつもりだったのですが、子供ができたのを機に家族でバリ島に移住することに決めました。ソフトバンクBBに務めていたときから、休暇が取れるとよくバリ島を訪れていました。いつかバリ島で、もの作りができたらなと思っていたのですが、「じゃあ、今、やろう」と。今、夫はバリ島と日本を行き来しながら、個人で仕事をしています。

■通信からもの作りへ――ずいぶん方向が違う気がしますね。

 そうですね。ただ、私の両親はブティックを経営していましたし、私も大学、大学院と服装デザインを学んでいました。また、目に見えないサービスを売る通信の世界にいましたから、今度はもの作りがしたいという思いもありました。

■バリ島でビジネスをする上での苦労はありますか。

 やはりコミュニケーションですね。私は日本人の感覚で「縫製の出来が悪い」という。でもバリ島の人たちにとっては、「どこが?」という感じなんです。質に関する感覚を合わせるのは大変でしたね。

 ただ、ビジネスの環境は整っていると思います。実は、バリ島には世界中からデザイナーが集まっているんです。バリ島で作って、本国で売っている人も多いですし、町中が縫製工場といってもいいくらい、縫製の職人がいるのです。「SHOKO MIYAMOTO」の製品は、仕立て服を作るテーラーで腕を磨いた職人たちが手掛けているので、品質にも自信があります。

■今後の展望を教えてください。

 デジタル系の商品を増やしていきたいですね。少し前から、カメラケース、レンズケース、三脚ケースなどのカメラ関連製品に加えて、iPhoneケースも販売し始めました。iPadケースなども考えています。

 ただ、そのときに「ママ目線」は残しておきたい。例えば、iPhoneケース。出産、育児の時期、どこでも気軽にコミュニケーションが取れる携帯電話はママたちにとって命綱と言っても過言ではありません。ただ、子供の世話をしていると、「あれ、どこに行ったっけ?」ということがよくあるのです。無くしにくいように斜め掛けにしました。ママ以外のユーザーにアピールするときも、この目線が商品の“ひねり”になると思うのです。