福岡市の百貨店内にある書店はその日、いたずら盛りの子どもたちの声で騒々しかった。だが絵本の朗読が始まって数秒後、それまでの喧噪(けんそう)が嘘のように静まり返った──。
1998年、志茂田氏が初めて読み聞かせをしたときの光景だ。「大人も子どももなく、その場に居合わせた人の心に絵本は等しく響いた。読み聞かせの力、深さを実感した」。翌年には仲間と「よい子に読み聞かせ隊」を結成し、全国各地で公演。その回数は現在までに1400回を超え、読み聞かせを聞いた人はのべ35万~36万人に上る。
読み聞かせを始めたきっかけは、書店などでサイン会を開催するたび、子どもの“やじ馬”が多く集まったこと。「僕自身、幼いころ母からたくさんの読み聞かせを受けた。その記憶が、心地よいものとしてずっと頭に刻まれている」。それが、今の活動にどこかでつながっているのだろうと話す。
「読み聞かせのすそ野を広げたい」との思いから、Webサイト「志茂田景樹のWEB絵本読み聞かせ劇場」も開設。クリックで絵本のページをめくりながら、志茂田氏の朗読を聞ける。