2010年は国民読書年。出版物も読書スタイルも多様化した今、紙の書籍を手に取って読むだけが読書ではない。デジタル化した書籍を、パソコンや携帯電話、専用の読書端末などで読むスタイルも、広がりつつある。米グーグルなどは、膨大な書籍をデジタル化して、インターネット経由で検索、閲覧できるようにする取り組みを進めている。また、書籍などのデジタルコンテンツをネットワーク経由で提供する「電子図書館」の取り組みも世界中で始まっている。国立国会図書館の長尾真館長に、インターネット時代の図書館の役割と、これからの図書館のあり方について聞いた。

■国立国会図書館は、どのような役割を担っていますか。

 国立国会図書館の役割は大きく2つあります。一つは、国会議員からの質問や調査依頼に応え、国会議員の活動に必要な基礎資料を整えたり、届けたりすることです。

 もう一つは、国民に対してサービスをする、図書館の“総本山”です。これらの役割を果たすため、日本中の出版物をあまねく集め、半永久的に保存しています。国民にとって国立国会図書館は、日本における知識や情報の“最後の砦”です。これは我々の最大のミッションです。ほかの図書館と違い、納本制度つまり法律によって、日本の出版物はすべて国立国会図書館に集められます。

■電子図書館の利点を教えてください。

 国立国会図書館の電子図書館化が進めば、国会からの質問や依頼に対して、今以上に網羅的な調査が短時間でできるようになります。

 国民に対するサービスも充実します。元々国民の税金で運営する図書館ですから、全国の人に対し、あまねくサービスを展開したいと考えています。現代の情報ネットワーク技術を使えば、地域を問わず利用できるようになるでしょう。

 ただ、著作権法の制約や費用など、難しい面もあります。国立国会図書館は、書籍、雑誌、膨大なマイクロフィルムや古典資料、オーディオ・ビジュアルの資料などを、全部で3600万点ほど収蔵しています。日本中の人が満足できるサービスを実現するには、これらを全部デジタル化する必要があります。それには膨大な費用がかかり、なかなか一挙にはできないため、少しずつ進めているところです。