「文部科学省のサイトが面白くなかったんですよ」。「深海ワンダー」を企画した理由を、内場氏はこう切り出した。

 深海ワンダーは、文部科学省が未知なることを知る楽しさと、同省の施策の一つである深海研究の成果を子供たちに知ってもらうことを目的に作ったサイトだ。こう言うとお堅いサイトをイメージするが、深海ワンダーで内場氏が重視したのは「エンタメ」。物語性や美しい映像など、コンテンツとしての魅力を追求した。「省庁のサイトは文字が多いし、言い回しも役所独特で分かりにくい。最後まで見てもらうには演出が必要だと思ったんです」。

 「見てもらう」ことの大切さを知ったきっかけは、入省1年目の経験だ。財務課に勤務していた当時、小泉内閣の下で義務教育費削減を巡る議論が巻き起こった。教育にかかわる重要な問題なのに、なかなかメディアで報道されない。「このとき、自分たちでも直接情報を発信できるメディアを持っていたらと心底思いました」。

 以来、内場氏は広報室を希望。2年前に異動してからは、その思いを次々に形にしてきた。「YouTube」で独自に制作した動画を配信する「文部科学省動画チャンネル」や、数字を切り口に文科省の施策を説明する「どんな?文科!」、前述の深海ワンダーなどのサイトを次々に開設。今年7月には深海ワンダーに続く「南極ワンダー」と、ゲーム風に文科省の取り組みを紹介する「キッズシティ」も立ち上げた。いずれも従来の省庁系サイトとは一線を画す、楽しさを重視したコンテンツである。

 内場氏は言う。「広報室ですから、省の施策のPRはします。でも、ただアピールしても自慢のようで、見る人はつまらない。人の心に届けるには、言いたいことの2歩も3歩も手前で我慢して、まず楽しんでもらう。それをきっかけに、ほかの情報も見てもらえればと思うんですよ」。