出会い系サイトなどを通じて犯罪に巻き込まれる子供は後を絶たない。そんな中、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案」が2008年6月に成立するなど子供をインターネット犯罪から守る動きが出ている。

 保護者や教師の意識はどこにあるのか、ITモラル教育をどうすべきなのか、などについてマイクロソフト 業務執行役員 CTOの加治佐俊一氏とネット教育アナリストの尾花紀子氏に話を聞いた。(聞き手は藤田 憲治=日経パソコン編集長)

■子供のインターネット利用に関して、保護者と教師に意識調査を行ったそうですね。

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加治佐氏 2008年9月に小学生のお子さんを持つ保護者とその教師にアンケートを行い、それぞれ412名から回答をいただきました。その結果から、保護者、教師とも、子供にパソコンやインターネットを利用してほしいと思っているけれど、不安も感じているという複雑な状況が浮かび上がってきました。

 特に、非常に不安・少し不安という回答を合わせると約9割近くの教師が不安を感じていました。一方の保護者は、6割が不安に感じているという結果になりました。

 教師は一人で大勢の子供を見なければなりません。だからこそ、教師の方の危機感が高い結果が出たのだと思います。

■不安な人が多いのは分かります。ただ、保護者も教師も「非常に不安」(教師:35.2%、保護者:7.3%)と感じている人は意外に少ないですね。もっと不安に感じても良いのでは。

尾花氏 こうした調査を見て思うのは、子供たちがパソコンや携帯電話をどのように使っているのか、本当のところを大人たちが分かっていないということです。パソコンや携帯電話に対する意識は大人と子供とでは全く違います。私たち大人にとっては新しくて珍しい道具ですが、子供たちにとっては生まれたときからある、ごく普通のもの。

 特にケータイについては、大人が舌を巻くほど上手な使い方をしている子がいます。一般的な大人は全くと言っていいほど、子供に引き離されています。このような現実を知らないために、不安が小さいという結果が出ているのではないでしょうか。

■若年層のユーザーのために、マイクロソフトはどんな取り組みをしていますか。

加治佐氏 技術面での対応、政府機関・業界とのパートナーシップ、セキュリティ教育・啓発活動の3つを柱に、すべての人々がコンピューターを安全に利用できる環境作りに取り組んでいます。

 基本的なことですが、技術面ではWindows VistaやInternet Explorerなどのセキュリティ機能の強化に力を注いでいます。新しい技術はセキュリティやプライバシーの保護が最優先です。

 内閣官房情報セキュリティセンターが2007年から毎年2月2日を「情報セキュリティの日」と定めたことを受け、「みんなで『情報セキュリティ』強化宣言!」という活動もしています。当社が事務局長を務め、政府機関や業界の企業が参加する「業界情報セキュリティ対策推進コミュニティ運営事務局」という組織が、セキュリティ対策の啓発活動を行っています。講習会や勉強会を実施するなど、情報セキュリティへの注意を喚起しています。

 また、この6月に「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案」(ネット規制法)が成立しましたが、他のインターネット事業者とともにこれに対する共同声明を出しました。きちんとした議論がなされないまま法律が成立しまうことに、大きな懸念を感じたからです。