一時は毎日のように「友達の友達」がLINEの乗っ取り被害に遭った話を聞いた。被害者はコミュニケーション手段となるLINEアカウントが使えなくなるため、報告の多くが代替となるFacebookやTwitterで行われていた。メールではまず聞くことはなかった。日常的なコミュニケーションはメールではないのかなと思った。

 一方、犯人側からの最初の呼びかけは必ずと言っていいほど同じ。「忙しいですか?手伝ってもらってもいいですか?」。紋切り型にもほどがある。毎回同じセリフを使い回していたら「LINE乗っ取り犯人です。どうもこんにちは」と名乗っているようなものだ。バリエーションの乏しさは犯人側組織でマニュアル作成能力のある人材が不足しているのだろうか。現時点では。

 老若男女、あらゆる人が被害者となった。乗っ取り直後の被害者本人と周囲の反応を見ていると、被害者の人徳が見えたときも。たいていは最初の呼びかけに対して「どうしたの?」と平然と接するものだが、中には二つ返事で「喜んで!」と答えるケースもあるらしい(もちろんLINEのやりとりは見られないので、後でFacebookなどから見聞した範囲である)。これは、乗っ取られてしまった被害者にかなりの人徳があるということ。周囲から「いつかこの人に恩返しがしたい」と慕われるほどの善行や魅力があるのだろう。あらためてそんなお人柄と生き様に圧倒され、尊敬の念を強くした。