• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • PR

  • PR

  • PR

  • PR

  • PR

松浦晋也「人と技術と情報の界面を探る」

何のための情報収集衛星なのか?(その1) 情報収集衛星とはこんなもの

松浦 晋也=ノンフィクション作家 2014/07/28 PC Online

 前回、安全保障とインテリジェンスの話を始めてしまったので、流れに乗ってこれから何回か、日本が現在運用している偵察衛星の情報収集衛星(IGS:Inforamation Gathering Satellite)の話をしたい。情報収集衛星は、安全保障にとって大変大きな問題なので、一般の人向けにきちんと分かりやすくまとめておく必要があると思ったからだ。

 こんなコラムを書いているが、私の本来の専門は宇宙開発分野だ(ちょっと宣伝。日経ビジネスオンラインでは宇宙開発の新潮流というコラムも連載している)。IGSは、1998年に開発が始まってから継続的にウオッチしてきた。機密の壁の向こうで、実態がよく分からないIGSだが、「8割方は公開情報の分析で分かる」というインテリジェンスの原則通り、公開情報だけでもかなりのことが見えてくる。

 そして、大変困ったことなのだが、IGSに対する政府の態度からは、歴代内閣や行政府が抱えてきた安全保障に関する認識の不足と間違いが透けて見えてくるのだ。

 まず、今回はIGSに関する事実関係をまとめよう。

IGSってこんなもの

 IGSは、1998年に開発が始まり、2003年3月から打ち上げが始まった。陽光で地上を見る光学センサーを搭載した光学衛星2機、雲を通して電波で地表を見る合成開口レーダーというレーダーを使うレーダー衛星2機の4機体制が基本で、地球上の任意の地点を少なくとも1日に1回観測できるように、それぞれ回帰周期4日の準回帰太陽同期軌道という軌道に投入されている。衛星の設計寿命は5年。この他、次世代技術の試験を行うIGS試験衛星もあり、2003年以降2014年7月までに光学衛星5機、レーダー衛星5機、試験衛星2機の合計12機が打ち上げられている。うち光学衛星、レーダー衛星各1機が、2003年11月のH-IIAロケット6号機の打ち上げ失敗で失われているので、軌道上に上がったのは10機ということになる。

 衛星の形や細かい性能は非公開になっているが、最初に開発した第1世代の衛星は、1998年当時に総理府・宇宙開発委員会で形状が公開された。

宇宙開発委員会資料に基づいて作成したIGS第1世代衛星のCG画像(p-island.com &S.Matsuura)。
[画像のクリックで拡大表示]

 また、その後の第2世代以降の光学衛星については、さまざまな噂を総合するとこのような形になっていると推測される。

いろいろな断片情報を総合した、IGS各世代光学衛星のCG画像(p-island.com &S.Matsuura)。
[画像のクリックで拡大表示]

 性能については、第1世代光学衛星が分解能1m、同レーダー衛星が2~3m程度と公開されている。分解能1mというのは、地表の差し渡し1mの物体を識別できるということ。宇宙から地球をデジカメで撮影して、1ピクセルが1m×1mに相当するということと同じだ。ただし、第1世代光学衛星には姿勢が安定しないという問題があって、分解能2m以下しか性能が出なかったことが公表されている。
 その後第2世代光学衛星は、分解能60cm級に、第2世代レーダー衛星は同1mへと性能向上した。今年度から打ち上げが始まる第3世代光学衛星では、「分解能41cm以上」になると公表されている。41cmという半端な数字になっているのは、米民間企業が軌道上に保有する民間地球観測衛星で最も分解能の高い衛星の性能が41cmだからだ。つまり「民間の衛星より性能が高い」ということを言いたいわけである。航空写真を使っているGoogleマップの都市部では最大20cm程度の物体が識別できるので、IGS第3世代光学衛星は「ちょっと引いて見た東京のGoogleマップぐらいの細かさで地上を撮影できる」と思えばよい。もちろん画像解析のプロは、さまざまな画像処理を行うことでそこからさらに情報を引き出すわけである。

 衛星の運用を行っているのは内閣官房・内閣衛星情報センター(CSICE : Cabinet Satellite Intelligence Cener)だ。本部である中央センターは、東京・市ヶ谷の防衛省に隣接して立地し、衛星の管制と取得データの解析を実施している。撮影したデータを受信する地上局は、北海道苫小牧市(北受信管制局)、茨城県・北浦町(北浦副センター)、鹿児島県阿久根市(南受信管制局)の日本列島に沿う形で3カ所設置されている。ただし、衛星へのコマンド送信はこれら国内3局だけではなく、その他の国内局や海外局も使用しているらしい。

 日本政府は、IGSに毎年600億円から700億円ほどをコンスタントに使っている。

1998年度(平成10年度)以降の、IGS予算の推移(内閣官房資料(pdfファイル):より)。
[画像のクリックで拡大表示]

 1998年以降の累積の投資は、1兆円を超えた。これは過去日本が実施した宇宙計画の中でも最大だ。それまで最大だった国際宇宙ステーション(ISS)日本モジュール「きぼう」は完成までに7100億円がかかった。ちなみに「きぼう」は、その後2020年までの運営費を含めると、計画総額が約1兆円になるだろうと見積もられている。

ここから先はITpro会員(無料)の登録が必要です。

次ページ IGSは特別なものではなく、地球観測衛星の一種
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4

あなたにお薦め

連載新着

連載目次を見る

今のおすすめ記事

  • 【東京五輪のワクワクIT】

    テストは20万時間、東京五輪ITシステムの舞台裏

     あと3年に迫った2020年の東京オリンピック・パラリンピック。「絶対に遅れることはできないし、稼働後の不具合も許されない」という五輪向けのシステムをどう構築しているのか。欧州Atosで東京五輪向けシステム構築プロジェクトを率いるセイレッシュ・チョーハン氏にプロジェクトマネジメントのポイントを聞いた…

ITpro SPECIALPR

What’s New!

経営

アプリケーション/DB/ミドルウエア

クラウド

運用管理

設計/開発

サーバー/ストレージ

クライアント/OA機器

ネットワーク/通信サービス

セキュリティ

もっと見る