国内における反転授業の先駆的存在の一つが、山梨大学だ。2012年から、富士ゼロックスと共同で反転授業に取り組んできた。試験の点数が軒並み向上するなど、顕著な成果も現れている。同大学 工学部 電気電子工学科の塙雅典教授が、反転授業で学習効果を高めるための秘訣を明かす。(記事構成は編集部)

山内:国内の大学でも、反転授業の取り組みが始まりつつあります(関連記事:講義が宿題になる――「反転授業」。その中で先頭を走っているのが、山梨大学と島根大学ではないでしょうか。私の中では「東の山梨、西の島根」と位置付けています。

 塙先生は、その「東の山梨」で反転授業を主導されています。どうして大学で反転学習をやってみようということになったのか、どんな効果があったかを教えてください。

:私が反転学習にかかわり始めたのは、2012年の4月のことです。ちょうどそのときに、文部科学省の方で「グローバル人材育成推進事業」の公募が行われていました。山梨大学はそれに応募することになり、私が申請書作成担当者の一人に指名されたのです。

山梨大学 工学部の塙雅典教授。光通信システムを専門とするかたわら、同大学での反転授業への取り組みを中心となって進めている
山梨大学 工学部の塙雅典教授。光通信システムを専門とするかたわら、同大学での反転授業への取り組みを中心となって進めている
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 そこで、グローバル人材を育成するための方法としてアクティブラーニングについて詳しく調査しました。すると、普段から私が授業で感じている課題を解決できる可能性があると感じたのです。

 私は普段から、教室中を歩き回ったり、学生に質問をしたりして、学生を寝かせない授業をしていました。それでも、教員が一方的にしゃべるスタイルに陥りやすい。「質問はありませんか」と問いかけても、学生はシーンとしています。

 教員の側が、授業の形式を「一方通行の知識伝達型一斉講義」に決めてしまっているきらいがある。それが、学生が自主的に学ぶ機会を奪っているんじゃないか、という問題意識がありました。アクティブラーニングを導入すれば、こうした状況を変えられるのではと思いました。

 今までのようにただ話を聞く一斉講義ではなく、演習的な活動や議論、プレゼンテーションなどを入れることによって、自ら考えざるを得ないところに学生を追い込んでいきたい。そして、自分から学んでくれる環境を作れないかと考えたわけです。

 結局、その事業で山梨大学は選に漏れてしまいました。でもこれを契機に、アクティブラーニングへの取り組みが本格化しました。

山内:工学系の学部では演習もしますし、わりと主体的な学習が行われているかなという印象もあるのですが。

東京大学大学院の山内祐平准教授
東京大学大学院の山内祐平准教授
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