千葉県立袖ヶ浦高等学校の情報コミュニケーション科では、2011年から1人1台のiPadを必携化している。日々の授業でどう活用され、生徒の成長にどう生かされているのか。同校でのICT(情報通信技術)活用を主導する永野直教諭に、3年以上にわたる取り組みから見えてきた可能性や課題について聞いた。(記事構成は編集部)
山内:このところ、さまざまな自治体で1人1台のパソコンやタブレットの導入が始まっています。この動きは、時代の必然だと思います。
ただ、教室の中で1人1台の情報端末を効果的に使うのは、普通の人が想像するよりはるかに難しいことです。先行事例をきちんと調べて、うまくいっているところは引き継ぎ、そうでないところは改善していかなければ、せっかくの優れた取り組みも広まりません。
永野先生は2011年度から、千葉県立袖ヶ浦高校で1人1台のiPad活用に取り組まれてきました。公立高校の事例としては、恐らく日本で初めてでしょう。今日はぜひ、3年以上という長い期間取り組んできたからこそ見えてきたものについて、お話いただけないでしょうか。
永野:はい、それでは最初からお話ししましょう。
iPadを活用しているのは、袖ヶ浦高校に2011年に新設された情報コミュニケーション科です。私は開設の1年前に、準備のために同校に赴任しました。
袖ヶ浦高校には、前任校で一緒に教科「情報」の授業に取り組んでいた先生も既に赴任されていました。その先生や管理職と一緒に、新設科のデザインをしました。近くの高校に、商業高校の情報コースが既にあったこともあり、全く新しいタイプの情報科を作ろうということになりました。就職に直結するようなスキルを習得するというより、情報を活用して学びに生かせるような姿勢を身に付けられるような学科にしたいと考えました。
山内:なるほど。では、情報の先生として、新設科を一から作られたわけですね。
永野:はい。ただ、私は、情報の教員としてはかなり珍しいのですが、元々社会科の教員なんです。コンピューターの専門家ではありません。
山内:えっ!? それは非常に珍しいですね。そんな方は他にいらっしゃらないんじゃないですか。