前々回に移民と人口減の話を書いたが、その後も動きが続いている。政府は4月4日に開催した関係閣僚会議で、東日本大震災からの復興事業や東京オリンピックの設備建設で、人手不足が起きるとして、外国人労働者の受け入れを拡大する緊急対策を決めた。具体的には、海外から現場の技能を身につけるために3年間の来日を許可する技能実習制度で、特に建設業のみを5年に延長する。この制度の再来日という制度を使うと最大で6年間の日本における就労が可能になる。一方で国土交通省による監査と監督の体制を強化して、帰還が過ぎた後の不法就労を防止するとしている。

 その一方で、既婚女性の就労を進めるとして、政府税制調査会は配偶者控除廃止に向けた議論を開始した。現在配偶者の年間合計所得所得金額が38万円以下の場合、本人の所得から38万円が控除される。配偶者が給与所得者の場合、申告に当たって所得控除が65万円あるので、配偶者の年間給与所得が65万円+38万円=103万円以下の場合は、配偶者控除が受けられるわけだ。このため、パート勤務の主婦は、年間所得が103万円を超えないように、労働をセーブするということが行われている。政府は配偶者控除を廃止することで、「同じ税金を取られるなら」と、女性がより長時間働くことを期待しているわけだ。

二枚舌の国は美しくない

 私には、「政府は、どうにもちぐはぐなことをしている」と見える。

 まず、そもそも技能実習制度は、母国で必要とされる技能を習得して帰国するという制度だ。それを今は、安い労働力を後腐れなく引き入れるための口実として使っているわけである。これは国として決してほめられた態度ではない。少なくとも“美しい国”を標榜するなら、使ってはならない二枚舌だ。

 国と国との間の外交では、ある程度の二枚舌も同床異夢も、物事を円滑に進める要素だ。しかし相手の国の国民を直接相手とする制度で、二枚舌を使うのは良くない。国民感情レベルでの日本への不信感を増大させるからである。

 そんな制度を、人手不足だからという理由で拡大するというのは、国自身が二枚舌をおおっぴらに認めたことになる。

 そして、日本で働けば、当然いろいろなしがらみができて「このまま日本に住み続けたい」と思う人もでる。長くいればいるほどそういう人は増える。なにかの事情で母国に帰れなくなる人もいるだろう。それを監督と監査を厳重にして不法就労を防止というのは、あまりに情がない。

 外からは「日本は、外人から絞るだけ絞ったら、はいそれまでよという国だ」と見えるだろう。

 配偶者控除に至っては、「それは逆だろ」としか言うほかない。女性の社会進出を進めたいならば、女性が社会に出て働けば働くほど税が割安になる制度を組むべきなのだ。配偶者控除の上限を103万円といわず200万円ぐらいまで広げれば、今の2倍ぐらい喜んで働く女性は多いだろう。北風をいくら当てても旅人の外套を吹き飛ばすことはできない。太陽の熱で、自発的に外套を脱ぐように持っていくべきなのだ。