2月24日、内閣府は、「外国からの移民を毎年20万人受け入れ、出生率も回復すれば100年後も人口は1億人超を保つことができる」とする試算を示した――とする報道があった。

 興味を持って色々調べてみたが、結論から書くと、確かに報道のニュアンスにあるように、政府は「移民受け入れ」へ踏み出したがっているように見える。

 この問題には人口減と高齢化とが関係している。しかし、さらにその奥底にあるのは女性問題であろう。今なお日本社会は、人口の半分をきちんと待遇するに至っていない。女性が女性として、この社会の中で経済的に自立して生きていくことができる条件をそろえれば、この問題は半分以上解決する。

 移民受け入れを言う前に、日本社会には解決すべき課題が山積している。そもそも、日本人が生きやすい国を作らずして、質の高い移民がやってくるはずもない。

議論のベースに“移民受け入れ”という選択肢が入る

 内閣府ホームページ2月24日の報道発表を見れば、どんな試算がどんな意味を持って出て来たのかを簡単に調べることができる。この日「選択する未来」委員会の第3回が開催され、公開された資料の中に内閣府事務局の試算(pdfファイル)が含まれていたのだった。

 この「選択する未来」委員会は、経済財政諮問会議の下部組織。委員会での議論は、経済財政諮問会議に上がり、やがて政策になる。経済財政諮問会議のメンバー(pdfファイル)を見ると、安倍晋三首相以下、経済関係の閣僚に日本銀行総裁、企業トップという人選である。東京大学から、経済の専門家である伊藤元重・大学院教授が入っているが、これは「acドメインからも話を聴きましたよ」という形を作るために、官僚が行った人選だろう。さらに「選択する未来」委員会のメンバー表(pdfファイル)を見ると、大手からベンチャーまでの企業トップと大学関係者が半々ほどで、三村明夫・新日鐵住金相談役名誉会長と吉川洋・東京大学大学院経済学研究科教授が会長としてまとめるというものだ。経済界が大学の意向を聞きつつ話をまとめるという形になっているといっていいだろう。

 委員の構成から分かるのは、「選択する未来」委員会の資料は、今後の日本の人口政策の基礎となるものであり、かつ議論を行う「選択する未来」委員会と経済財政諮問会議のメンバーは経済と政治の関係者が中心になっているということだ。

 そこに、議論のベースとはいえ「移民受け入れ」という選択肢が入ったことの意味は、決して小さくはない。