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松浦晋也「人と技術と情報の界面を探る」

多能性獲得細胞と、人は人しか気にしないということ(その1)

生物学の常識がどんでん返しを食らった1月

松浦 晋也=ノンフィクション作家 2014/02/05 PC Online

  1月29日、理化学研究所から驚くべき研究が発表された。体細胞が酸性溶液の刺激など、比較的単純な刺激でさまざまな細胞へと変化する能力を持つ多能性細胞に変化するというのである。

 さまざまな報道がなされ、社会現象と化しつつある、この研究について、今回はまずその内容と意義を分かりやすく説明することを試みよう。

痛んだ体の一部を取り替える可能性――再生医療

 体細胞は、皮膚は皮膚の細胞、神経は神経の細胞、骨は骨の、肝臓は肝臓の細胞というように、それぞれの役割に分化している。しかし、我々は最初は1つの受精卵だったことから分かるように、受精から胎児へ、出産へと母胎内で成長する過程では、すべての細胞に変化する可能性を持った多能性細胞から体が形作られる。

 いったん、それぞれの細胞に変化したら、そこからもとの多能性細胞に戻ることはない――と今まで思われていた。

 しかし、人工的なプロセスで分化した体細胞を多能性細胞に戻すことができたら、さまざまな臓器を狙った通りに培養し、作り出す事ができるかもしれない。現在、臓器移植した人は、免疫が拒絶反応を起こさないように免疫抑制剤を服用し続ける必要がある。自分の細胞から作った臓器なら、自分の免疫は反応しない。弱ったりダメになったりした臓器や神経を、自分の体細胞から人工的に作り出して移植する――これが再生医療というもので、実現すれば医療の大変大きな進歩となる。

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