前々回危惧を表明した特定秘密保護法案が、国会で可決されてしまった。

 審議と採決はいかにも強引だった。審議開始が11月7日、44時間の審議の後11月26日午前に衆議院・安全保障特別委員会で強行採決。自由民主党、公明党、みんなの党の賛成多数で可決。同日夜、衆院本会議で維新の会が退席した状態で可決。参議院に送付された法案は、22時間の審議の後、こちらも12月6日に可決された。参院採決の前提となる公聴会を、12月4日に割り込ませるという離れ業まで繰り出しての採決だった。衆院44時間、参院22時間という審議時間は重要法案としては異例に短いという。

 9月に行ったパブリックコメント募集では、意見件数9万480件中、反対意見が6万9579件と全体の77%を占めた。採決後の12月9日、安倍晋三首相は記者会見で「私自身がもっともっと丁寧に時間を取って説明すべきだったと反省している。しかし、今まで秘密について、秘密の指定、解除、保全のルールがなかった。そこに問題があるんです」と述べている。

 だが面白い事実が報道されている。12月7日、自民党は、会が特定秘密の妥当性を監視する機関の新設に向け、法整備を急ぐ方針を決めた。衆参両院の議院運営委員会メンバーによる視察団を来年1月にも派遣するという。

 法案が成立した後で、監視機関の法整備と制度の勉強を開始する――つまり、法案を強行採決までして通した政府自民党も、そもそもきちんと秘密を保護し、なおかつ弊害を防ぐにはどのような制度を整備すれば良いかが、分かっていなかったのだ。

 制度を作るということは実効的に機能するシステムを構築することだという認識がないまま、「日本にとって必要な秘密を保護する」というコンセプト先行で自民党は動いていたわけである。