10月23日早朝のプレゼン見ましたか? まだの人はオンデマンドでいつでも見られる(方法は後述)ので、今晩にでもゆっくり。今回の発表で新しいのはiPadが軽くなったり、iPad miniの画面がきめ細かくなったり、と、アップルのビジネスを更改するほどのものはあまりなく、ちょっと期待外れ。しかし、長年パソコンビジネスをウオッチしてきた私にとって驚きだったのはOS Xは新版になったにもかかわらず全部無料、新規ハード購入者にはオフィス系ソフトも、ビデオ/写真/音楽を楽しむ充実のアプリケーションも無料。う~~ん、こうなると、他のプラットフォームに比べて、買ってきたその日からできることが圧倒的に多く、かつ快適。情報機器はハード/ソフト一体となったときの機能性で価値が決まるものであるため、アップルは大きなアドバンテージを手に入れたことになる。一般ユーザーに向けて、もう、マイクロソフト製品は買わなくていいですよ、との強いメッセージを発信しようとしたものと考えられる。

OS無料化、ユーザーとしては「イイネ!」たくさんあげたい

 ハードとソフトを一体化して自社開発し、ユーザーのもとに届けている大手パソコンメーカー、タブレットメーカーはアップル以外にはない。マイクロソフトはいくら素晴らしいOSを開発してみんなに使ってほしいと考えても、コスト回収の道がない以上、無料にしてしまうわけにはいかない。グーグルはAndroid OSを無料で配布しているが、さまざまなクラウドサービス上での広告モデルやハードメーカーとのライセンス契約で収益の道を確保した上での施策だ。アップルの大盤振る舞いとはちょっと種類が違う。

 新しい、MacのOS、MavericksにはMacをさらに快適に、さらに高速に動作させる新しいモジュールがたくさん入った。また、iBooks Storeで購入した電子書籍を管理、閲覧できる「iBooks」アプリや、これまでとにかく評判の悪かった地図アプリ「マップ」の改良版を始め、高速性、省電力性能が従来よりも格段に良くなった。

 新機能がしっかり入った上に、新しいフォントが組み込まれている。紙面を組み上げたときに、全体に明るくすっきりした印象を与える「游書体」のゴシック(ミディアム&ボールド)と明朝体(ミディアム&デミボールド)。iOS7ではフラットなデザインですっきりと垢抜けた印象となったが、その流れを組むフォントが入り、デザインポリシーに一貫性が加わった(図1)。

図1 「游書体」のゴシック(ミディアム&ボールド)と明朝体(ミディアム&デミボールド)が組み込まれた「OS X Mavericks」。
図1 「游書体」のゴシック(ミディアム&ボールド)と明朝体(ミディアム&デミボールド)が組み込まれた「OS X Mavericks」。
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 今現在、Mountain Lionを満足して使っている人が、慌ててアップグレードする必要はないが、新しいアプリを導入したい、iWork上での作業をiCloud経由で他のデバイスと同期させたい、といった場合にはアップグレードが必要だ。無料なので、思い付いたらいつでもアップデートできる気楽さがいい。そんな場合も無料ということなので、気軽に取り組める。これまで使っていたMacがリフレッシュされ、さらに快適に使えるようになるのならユーザーメリットは大きい。これまではOSが有料だったため、躊躇しているうちに、iOSデバイスとの連携がうまくいかないだの、不都合が次々と現れ、プロダクティビティ向上とは反対の方向に押し流されてしまっているユーザーも多かった。多くのユーザーが最新のOSに統合されれば、ユーザーがハッピーなのはもちろん、アップル自身のサポートコストも激減するはずだ。また、OS X向けにアプリを開発しているデベロッパーもリソースを集中でき、ソフトウエアの品質向上につなげられる。OS無料化はさまざまな方面に大きなメリットをもたらすのだ。

 ただし、アップグレードはOS全部のフルアップグレードなので、ダウンロードするファイルサイズは5.29GBと巨大だ。高速インターネット回線が使えない環境なら、じっくりと腰を据えて作業する心積もりになっていないと、日常の業務に差し障りが出る(図2)。

図2 2007年以降の各機種なら事前にインストールされたOSが何であっても、無料でアップグレードが可能だ。大盤振る舞い、素晴らしい。
図2 2007年以降の各機種なら事前にインストールされたOSが何であっても、無料でアップグレードが可能だ。大盤振る舞い、素晴らしい。
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