NSA(米国家安全保障局)が、IT企業の協力を得て多数の個人情報を入手していた問題については以前も書いた。内部告発したエドワード・スノーデンの身柄も宙に浮いたままだが、米国内のIT企業が本当にどの程度協力したのかという真実も、さっぱり分からないままだ。

 マイクロソフトをはじめ、IT各社はNSAからの要請と自社の対応について、もっと詳しい情報を公開させてほしいと当局に要望を出しているらしい(関連記事)。けれども既に欧州各国では、米IT企業に対する信頼感に疑問符が付いているようだ。

政府の「地引き網」的データアクセスに懸念

 NSA事件が起こる前から、米国のいわゆる「愛国者法」の影響は懸念されてきた。この法に基づくと、テロリズム阻止の名目で個人情報へのアクセスが許される。しかも米国のITサービスを利用していれば、外国企業でも捜査の対象になってしまう可能性がある。愛国者法は、当局の解釈がどんどん拡大しているようで、プライバシー侵害や監視国家のようなふるまいも怖れられていたところだった。

 それが今回の事件では、企業などが米国IT企業に預けているデータが「ドラグネット(地引き網)」的に、根こそぎ当局のアクセスの対象になることが分かってしまった。米国のIT企業を敬遠する向きも出てきたようだ。

 特に問題になるのが、クラウドコンピューティング関連のサービスを提供する企業である。NSAのリストには含まれていないものの、アマゾン・ウェブ・サービスやラックスペースなど、米国の企業向けクラウドストレージに自社のデータを預けておくことが賢明なことかという疑問が、欧州企業の間で頭をもたげているという。そして、自国のサービスへ乗り換えたいと考え始めた企業が、スウェーデンやスイス、ドイツなどの欧州諸国で出始めているようだ。