ようやく日本でも、インターネットを使った選挙活動が解禁される。慌ててTwitterやFacebookなどの講習会に出て戸惑う政治家たちが報道されているのを見ると、人ごとながら、旧来型政治家は大丈夫だろうかと心配になる。

 ネット選挙活動の普及は、単に投票行動を変えるだけではない。選挙時の活動のみならず、集金から政策立案まで、「政治の仕組みそのもの」を大きく変えてしまう可能性をはらんでいる。

 これは政治家だけの問題ではない。従来の慣習に依存してきた政官財の、さらにはマスコミの在り方まで変えてしまうだろう。良い機会なので、10年後も生き残るであろう政治家像を考えてみたい。

1.地盤よりフォロワーの量と質

 これまでは、地元の支持層が多いかどうか=地盤が重要だったので、二世議員が増えてしまった。しかし、これからは、ネットのフォロワーや友達がどれだけ多いか、そこからネットコミがどれだけ広がるかが重要になる。

 しかし、ネットのフォロワーは、カネや利益誘導で増えるわけではない。むしろ、そんな裏工作が知れたら、致命的な炎上が起きてしまうので要注意だ。

2.無名の個人による寄付金

 これまでは、利益誘導を巧みに使い、業者や業界団体からの献金を集めることが、政治家の実力を示していた印象がある。しかし、財界との癒着は、情報公開やリークにより明らかになる。ネット選挙活動において、候補者のイメージを悪化させるだろう。

 そこで、いち早くネットを活用し、広く浅くフォロワー=投票者を増やし、個人の献金を集める手法が有効となる。

3.個別政策の賛同一覧表

 これまでは、どこの政党に所属するかが、人気、支持基盤、資金の点で重要だった。しかしネット市民は、同じ党員でも政策やマニフェストに関する考え方が真逆の場合があることを学びつつある。

 だから、個別政策への賛否と、これまで何に投票したかが分かる「候補者別の一覧表」がネットで公開されれば、投票行動も大きく変わるだろう。

4.握手より「いいね」とコメント

 地元有力者が集まる会合や冠婚葬祭には、政治家が顔を出して顔を売る。確かに、これまでは一人ひとりの市民よりも、有力者との握手の方が重要な政治活動だったかもしれない。

 しかし、政治家と市民がネットで気軽に対話できるようになった今、ネットで影響力のあるネット市民の発言を注視して、積極的にコメントする方が大切だ。握手だけでは支持されない。

5.ポスターよりネットで公開討論

 政治にカネと組織が必要なのは、大量のポスターを刷ったり張ったりするような、コストの掛かるPR活動が多いからだ。しかしこれからは、ネットで毎日発信するといった、地味な活動が大切だ。今後は「ザ・ハフィントン・ポスト」のようなマスコミ×ネットコミ連動型メディアが増える。新メディアで個別の問題に対して自分の意見を堂々と主張し、共感を呼ぶ議論ができることが、最大のPRとなるだろう。

6.官僚よりネット市民立案

 これまで、政策立案は官僚任せで、政治家は官僚の言いなりだったように思える。そして、官僚は天下り先への利益誘導に終始していたのではないか。

 しかし、これからのロビー団体は、ネット広報と署名活動を駆使したテーマ別のNPOになる。そして、政党を捨てて、自分の理念を実現するのにふさわしい複数のNPOと協働して、政策、支持基盤、資金を得る政治家が勝つ。

7.マスコミよりネット市民の検証

 業界団体の広告と、政治家へのぶら下がり取材に依存する大マスコミは、検証力や追求力の点で疑問が残る。残念ながら、これはネット市民にとってもはや常識に近い。

 一方、某首相の選挙中の辻説法と就任後の発言の変化がネットで動画公開されるやいなや、たちまちネットコミでシェアされた。今後は、そんなネット市民記者の検証こそが真の追求になる。