大学のあり方を根底から揺さぶる動きが、ネットを中心に起こっている。「MOOC」(ムーク)と呼ばれる、無償のオンライン講義の隆盛だ。米国を中心に、名だたる大学がこぞってMOOCに参入。世界中の誰もが一流の講義を無料で履修でき、修了したことが認められれば認定証まで手に入れられる時代がやってきた。
MOOCの牽引役の一つが、米国のベンチャー企業、コーセラだ。同社が運営するオンライン教育サービス「Coursera」は、MOOCのプラットフォームとなっており、米コロンビア大学、米プリンストン大学、米スタンフォード大学など、62の大学が講義を提供している。2013年2月には、国内の大学で初めて、東京大学が参加を表明した。
FacebookやTwitterを上回るペースでユーザーを獲得しつつあるという同社。今回は、この分野の専門家であり、実際に同社を訪れた北海道大学 情報基盤センターメディア教育研究部門の重田勝介准教授との対談を通じ、コーセラやMOOCの実像に迫る。(記事構成は編集部)
山内:重田先生は先日、コーセラを訪問されたそうですね。コーセラの詳細は国内ではほとんど紹介されていないので、今日はぜひそのお話を伺いたいのですが、その前に、改めてMOOCについて押さえておきたいと思います。MOOCは今、大学に大きな影響を与える動きとして世界中で大騒ぎになっています。そもそもMOOCとは何なのか、説明していただけますか。
重田:MOOCとは、「Massive Open Online Courses」の略語で、大規模公開オンライン講座などと訳されます。大学や、教育関連のベンチャー企業が、全世界に向けてオンラインで講座を公開する取り組みのことです。少し語弊がありますが、一般向けに大学レベルのeラーニングを提供する取り組みと言えば分かりやすいかもしれません。
山内:これまで、このような取り組みはなかったのでしょうか。
重田:ありました。例えば、大学は自校の学生に向けてeラーニングの講座を幅広く提供していました。eラーニングを主な教育手段とする大学も、多数あります。MOOCの特徴は、自校の学生だけでなく、一般向けに広く参加者を募るというところです。
山内:なぜ、こんなに大騒ぎになっているんでしょう。