ずっと原子力発電について書き続けているが、今回は一回お休みをして、やっと日本での展開を開始したアマゾンの電子書籍販売に関連して、思うところを書くことにする。

 発表は突然だった。2012年10月24日、アマゾンは電子書籍リーダー「Kindle」の発売と、Kindle向け電子書籍を販売する日本向けサイト「Kindleストア」の開設すると公表した。2007年11月19日に米国で初代Kindleを発売してから5年。日本市場への参入が思いのほか遅れたのは、出版社との交渉が難航したためと言われている。その間、日本では各出版社独自の電子書籍ストア、あるいは出版社の出資を受けた電子書籍ストアが、それぞれ異なるファイルフォーマットとDRM(デジタル著作権管理。ユーザーから見るとコピー制限のこと)でネットに軒を構えるようになっていった。

 私は、2011年5月に、その名も「電子書籍に関する15の考察」という電子書籍を日経BP社から上梓した。電子書籍に関する考察を電子書籍で出版するというのはちょっとした遊び心と同時に、ちょうど電子書籍市場の立ち上がり時期に電子書籍テーマの連載を書いたという偶然からだったが、幸いなことにhontoでも売ってもらえている。
 この中で、私は紙の書籍に代わる社会インフラとしての電子書籍の将来について以下のようにまとめた。

その1:電子書籍は普及する
その2:電子書籍は、ハンドリングにおいて紙という実体以外の紙の本の特徴を備え、なおかつ紙の本にはない優れた特徴を持たねばならない。
その3:電子書籍は、本質的にiPad、kindle、ガラパゴス、パソコンなどの電子書籍端末に非依存でなくてはならない。どんな端末でも読める必要がある。
その4:コピー制限などのDRMはごく緩いものにするか、さもなくば、かけるべきではない。
その5:それでもDRMは必要になる可能性もある(図書館などでの貸し出しへの対応)。
その6:バージョン管理を行う仕組みが必要。
その7:個人情報は極力集めるべきではない。

 さて、本命と目されていたアマゾンの日本市場参入により、これらの条件にどのような変化があったろうか。