1号機、3号機、そして4号機と水素爆発が相次いだことで、これらの原子炉の使用済み核燃料プールが、屋外に露出する事態となった。これらのプールには再臨界を起こしやすい未使用の燃料と、大量の放射性物質を含む使用済み核燃料が保管されている。プールは再臨界を起こさないよう最大限の注意を払って設計しているが、爆発による破損で再臨界が起きる条件がそろってしまったかもしれなかった。

 国会事故調査委員会の報告書では、一番甚だしく破損した3号機の使用済み核燃料プールについて、崩壊熱から推定すると水温75℃で蒸発によって1日に10~17cmの水位の低下が起こるはずなのに、3号機プールが15日や16日に激しく水蒸気を吹き上げて沸騰していた事実を指摘している。発生している熱が崩壊熱だけとするよりも多いではないのではないか、というわけだ。3号機プールには臨界を起こしやすい未使用核燃料も保存されていた。このため国会事故調報告書は、未使用燃料が折り重なるような位置関係になって再臨界を起こした可能性についても検討すべきとしている。

 しかし、2011年3月半ばの段階では“起きるかも知れない”再臨界よりも、“放置すれば絶対に起きる”使用済み核燃料が水上に露出することのほうが切実な問題だった。
 ここで連載第7回の表を思い出そう。貯蔵していた燃料の本数とプールの発生していた崩壊熱だけ抜き出すと以下の通りになる。

●震災発生時の使用済み核燃料プールの状態
原子炉1号機2号機3号機4号機
保管していた燃料集合体の本数2925875141331(うち炉内取り出し燃料が548)
2011年3月11日時点でプール内燃料が発生していた崩壊熱0.18MW0.62MW0.54MW2.26MW

 一見して4号機のプールが一番危険な状態であることが分かる。4号機は原子炉を止めての改修作業を行っており、前年11月まで使用していた核燃料がすべて使用済み核燃料プールに保管されていたのである。3カ月前まで炉内で核分裂反応を起こしていた核燃料だから、まだ大量の崩壊熱を出している。プールの水が干上がり、核燃料が溶けて内部の放射性物質が流出し始めたら、手に負えなくなる。

 3月17日から警察の高圧放水車や、自衛隊のヘリコプターによってむき出しになった使用済み核燃料プールに給水する作業が始まった。