明治大学で「ベンチャービジネス論/起業プランニング論」を教えるようになって早7年になる。自分のブログを立ち上げて、大好きなモノやコトをネットで“行商”する実践的な授業だ。TwitterやFacebookなども使って“ご縁”を広げ、積極的に社会と関わりながら自分をブランド化する修行である。

 学生と接して痛感するのは、積極的な対話と行動を通じて、協働しながら問題を解決していく「社会人基礎力」が不足している点だ。社会人基礎力は、経済産業省が2006年から提唱している基礎的な力。ちょうど先日、「社会人基礎力育成グランプリ2012」の関東大会で審査委員を務める好機があった。そこで改めて、ITを活用した“社会人基礎力アップ”の方法を考えてみたい。

1.入学から「私の履歴書」ブログ

 就職が厳しい当世の学生にとって、自分をブランディングすることが何より大切である。ゼミの研究や部活など身近な活動でよいので、「自ら動いて」「現場で実践・継続」したことを、ブログで発信することから始めよう。就活で履歴書や面接の準備をするのではなく、入学時点から4年がかりで「自分が大学で何をしたか」をつづる、「生きた履歴書」を作るのである。

2.インターンしながら情報発信

 企業やNPO法人のインターンに挑戦することは、社会人基礎力を磨きながら、自分らしさを発信する絶好の機会である。そこで学んだことやインターン先の魅力を、ネットで積極的に発信しよう。職場を学びと修行の場に変えられる社会人基礎力を広く示すのである。同時に、そこで出会った人生の先輩方とソーシャルメディアでつながって、長くて深い交流を続けよう。

3.友人より達人とネットで対話

 せっかくのソーシャルメディアも似たような友人とおしゃべりに使うだけでは社会人基礎力は身に付かない。自分よりはるかに知識も見識も勝る忙しい達人たちと、ネットで交流できるのだから、これを使わない手はない。

 大学の先生はもちろん、愛読書の著者、入社したい会社の経営者など、自分が目標とする達人をフォローして、考え方、生き方をまねしてみよう。

4.達人のお薦めを試して発信

 ソーシャルメディアでフォローした達人が、日々お薦めしている本、映画、テレビ番組、音楽、食べ物などを、自分でも片っ端から試そう。自分の好みと違っているほど未知なる自分の好奇心や感性が覚醒し、“脳のパラボラアンテナ”が広がる。そして、キャッチしたモノやコトに集中する“心のズーム力”も磨かれる。さらに、味わった感動を多くの人に分かりやすく伝えるべく写真やリンク付きで発信しよう。もちろん、達人へのお礼もお忘れなく。

5.新聞や雑誌にコメントを投稿

 今はネットでニュースを読み、誰もがコメントもできる時代である。1日に1つは新聞や雑誌の記事に注目して自分の意見を発表してみよう。毎日、時事問題に触れ、自分の頭で考え、言葉にする訓練を続ければ“地頭”が良くなる。自分の意見が、記者や筆者に読まれる時代が来たのだ。

6.写真でYouTubeチャンネル

 短時間で明解に自分をアピールするには、写真を使ったスライドショーが最適だ。旅好きなら絶景、B級グルメ好きなら看板や料理、創作する人なら作品群など、たくさんの写真を撮りためているはず。パソコンの写真管理ソフトで分類整理して1~3分程度のスライドショーを作り、YouTubeで公開。その動画をブログに貼り付けて、ソーシャルメディアで広めよう。

7.ネットで自信を付けてプレゼン

 自分の写真や文章が「いいね」と褒められ、友達も増えてくると、引っ込み思案の若者でも、だんだん自信が付いてくるはずだ。私の講義でも、ブログが充実してくると、プレゼンや発表も上達するから面白い。おそらく、自分が認められた経験と、堂々とプレゼンできる自信は正比例するのだろう。プレゼンに際しても、作成した写真スライドショーや書きためたブログが、きっと役立つはずだ。